やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

植民される欧州 その3.1 ローマ風呂に見る植民の歴史

イギリスのオックスフォードの近くにはバース Bath、という名前そのまま町がある。

「お風呂市」である。Bath大学というのもあって、これは「お風呂大学」である。

ちなみなに、ドイツのケルン大学はケルン市(Kolen=Colon)、即ち植民地市にある「植民地大学」!

 

なぜ欧州からローマ人が残した公衆風呂と水道が消えると、現在の欧州が過去数百年に渡って行った資源強奪の世界植民活動につながるのか?

 

金七紀男著『エンリケ航海王子』にその説明がある。ペスト、黒死病がヨーロッパを壊滅状態にし、海外に資源を求めざるを得なかった。決して司馬遼太郎や和辻哲郎が描写した海外志向のエンリケではなかった、というのだ。

エンリケ航海王子、1500年代に始まるポルトガル、スペインの大航海時代の先駆けとなった人物。

 

参考:

 

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黒死病は欧州の30−60%の命を奪った。

 

そして中世の欧州でペストなどの伝染病が流行した背景には下水道の不備があった。

国交省のウェッブ「下水道の歴史」が詳しい。

http://www.mlit.go.jp/crd/city/sewerage/data/basic/rekisi.html

 

ここで歴史の if。

if, ローマ人が残した公衆風呂、水道の設備管理がきちんと維持されていれば、欧州の伝染病被害は抑えられたかもしれない。

そうすれば、海外での資源強奪植民活動はなかったか、これほど酷い搾取にはならなかったのはなかろうか?

これは楽観過ぎるかもしれない。エンリケの時代にキリスト教徒でないものは人間でない、そしてキリスト教徒の奴隷になる事で祝福が与えられる、という解釈が始まった。イエスが聞いたら怒るだろう。

 

欧州から公衆風呂がなくなったのは、色々ウェッブサーフィンをするとその維持管理ができなかった事以外に、お湯が伝染病を広めると信じられたこと、そして何より裸の付き合いがキリスト教の信義に合わなかった事が理由のようだ。

 

まだ読んでいないがこんな本もある。

『図説 不潔の歴史』 2008年、キャスリン アシェンバーグ (著), 鎌田彷月 (翻訳)