やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

小堀桂一郎東京大学名誉教授の天皇象徴説その2

小堀桂一郎東京大学名誉教授が現行憲法天皇象徴の部分が、新渡戸の本を参考にされている可能性を議論した記事を目にし、当方も同じ考えだったので、昨日はアドレナリンが全開状態だった。一晩経って、小堀教授訳詞のシューベルトのリートも歌って、冷静になった。

再度小堀教授の記事を読み返し、当初も気になった和辻哲郎の箇所だけ、メモとして書いておきたい。

小堀教授は下記のように述べている。

「この事態に最も真摯(しんし)に対処した知識人達の代表とも云ふべき和辻哲郎は、昭和20年から23年にかけて「国民全体性の表現者」を中心とする連作の論文を以て、象徴と表現する事が天皇の地位の革命的変化を意味するわけではないとの見解を展開した。もしこの時彼が新渡戸の過去の業績を知つてゐたならば、論策の有力な支柱となり得てゐたであらうが、それが無かつたから、和辻は〈日本国民の総意〉といふ字眼に力点を置き、総意の形成は歴史の所産であるとの立論を以て、国体は変更を受けてゐない事の論証に肝胆を砕いた。」

和辻哲郎の見解を読んだ事はないのだが、和辻が新渡戸の過去の業績を知らない、という箇所は気になった。

和辻は一高の学生で、自ら新渡戸信者と名乗る程の新渡戸シンパだったのだ。新渡戸の英文の本も読んでいた可能性はあるのではないか?

新渡戸が外国人に日本の事を理解させるために、外国の例を引いて説明すると言う事をよくやっている。「象徴」というのも、そのために引いて来たのであり、「天皇が象徴である」と新渡戸自らがいっているのではない。(ここは断言する)

和辻は知っていいて、新渡戸の議論を無視したのではないか?

それは、矢内原同様、新渡戸の生徒として、新渡戸を守りたかったからではないか?

新渡戸は、日本国内では共産党軍閥を批判し命を狙われ、満州事変を海外で擁護し、亡くなる直前は四面楚歌のような状態であった。多分昭和天皇と矢内原などの弟子たちを除いて。