やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシアの移民問題

 この問題も、パラオの大統領選を追いながら気になっていて、FBにはあげていたがブログに書けなかった。2016年最後のブログ。

 

米国と自由連合協定を締結するミクロネシア3国から米国、特にグアム、ハワイ等への移民が問題となっており、改善されるどころか悪化の一途、というニュースである。

 

 

最初にミクロネシア地域で話題になったのが、グアムに移民していたミクロネシア連邦のチュック州出身者が強制送還された、というニュースである。今年の7月頃のニュースだ。

 

Migrant to be deported from Guam again   July 5, 2016

http://www.guampdn.com/story/news/2016/07/05/migrant-deported-guam-again/86695778/

 

重なる盗みの罪で米国連邦司法の判断が下され、二度と米国の地を踏む事ができなくなった、というニュース。確か、ミクロネシア連邦のクリスチャン大統領がグアムの対応に怒りを示していたのを記憶する。グアムの知事は、移民問題は連邦政府の管轄、と逃げるが、ミクロネシア連邦、特にチュック州からに移民にグアム政府は手を焼いている話は以前から聞いている。

ミクロネシア連邦としては、域内でのイメージが悪くなるだけでなく、凶悪犯を戻されたチュック州、若しくはミクロネシア連邦のどこかの州の負担が増える事になる。もしくは野放しにされて、市民への影響があるのかもしれない。パラオの例でわかるように小国の法執行機能には限界がある。

 

 

それから今日FBで回覧されていたMother Jonesというメディアの記事である。

こちらはハワイのミクロネシア移民、ホームレスの話である。

 

 

AMERICA'S REAL MIGRANT CRISIS IS THE ONE YOU'VE NEVER HEARD OF

An obscure 30-year-old treaty has landed thousands of Micronesians in poverty and homelessness in Hawaii. AARON WIENER DEC. 29, 2016 6:00 AM

http://www.motherjones.com/politics/2016/12/hawaii-micronesia-migration-homeless-climate-change

 

ミクロネシアから来た移民がアラモアナ公園などホームレスになっている話。これも数年前から話題に、ニュースになっていた。上の写真である。

人口1万人当たりのホームレスの数は,米国内でハワイが一位で49.3人。続いてニューヨーク、ネバダ州。米国の平均は18.5人だからハワイは3倍以上。

2003年には自由連合協定を締結するミクロネシア3国からハワイに移民している人口は7,297人であった。最新の統計では2万人に達しているであろう、とのこと。

もしかしたら連邦政府もハワイ州政府も統計をしていないのかもしれない。

 

大統領選でトランプ候補が移民問題をあげていたが、本当の移民の危機は米国本土から遠い西太平洋で起こっている、とのこ記事は訴える。

自由連合協定を締結するミクロネシアから米国への移民は自由だが、正式に移民した外国人が受けられるような社会保障制度は適用されない。しかし、自国での医療や教育の機会が限られており、仕方なくミクロネシアからハワイにやってくるのだ。

 

ハワイ州が、この自由連合協定締結国からの移民に支給する費用はうなぎ上りである。

2002年が32ミリオンドル、2008年101ミリオンドル、2014年163ミリオンドルだ。10年で5倍。

 

ネイティブハワイアンのホームレスは、ミクロネシアが米国から多くの支援をもらっている事を批判する。米国一般市民のミクロネシアへの印象は良いものではない。ビキニでの核実験の犠牲など、米国民はしらないのだ。即ち米国が負う、ミクロネシア諸国への責任を米国市民は認知していない。

そして、ハワイのホームレスの多くがミクロネシアの人々である、という一般に広まっている情報は噂でしかない、とこの記事は指摘する。

 

ミクロネシア移民の、またそのホームレスの問題だけではない。2023年に援助金が止まる自由連合協定自体についても、米国とミクロネシア諸国は真剣に協議する必要があるのだろうが、Esther Kia'aina内務省島嶼担当事務補佐官は次期トランプ政権は、投票権を持たないミクロネシアの、しかもハワイの一隅の問題に関心を示さないであろう、と悲観的コメントを述べている。