やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

BBNJの主人公は島嶼国だった!

BBNJの議論。現在までの2回の準備委員会の議論をまとめた非公式のテキスト案(2017年2月28日付け)が下記からアクセスできる。(100ページ以上、1000個以上の要素が提起されているという)

Chair’s non-paper on elements of a draft text of an international legally-binding instrument under the United Nations Convention on the Law of the Sea on the conservation and sustainable use of marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction http://www.un.org/depts/los/biodiversity/prepcom_files/Chair_non_paper.pdf

本格的に読む前にツラツラ眺めたところ、もしやこれは島嶼国が主人公では?と思うキーワードが目についた。 そこで、島嶼国名、島嶼国国際組織名、先進国、国際NGOのキーワード検索でいくつ出て来るか、即興で統計、グラフ化した。(2、3時間の作業ですので間違っている可能性があるかもしれません。案として掲載します。)

結論はまさに島嶼国(太平洋とカリブ)対先進国の図式で、BBNJとは島嶼国政策である事がわかった!(ホント?まさか!知らないで博士課程受けてしまった!)

まず太平洋島嶼国だが国家名で検索するとフィジーとミクロネシア連邦しか出てこない。他の島嶼国はゼロ。外している国があるかもしれないが。。 

フィジーはUNCLOS作成時代から海洋政策に活発に参加しているのでBBNJでも活発なのは予想がつく。が、なぜミクロネシア連邦なのだろうか?ミクロネシア連邦は米国と自由連合協定を締結し国際協定は米国の影響が大きいはずだ。

他方、独立以降一貫して中国大陸との外交関係を維持しており、中国の影響も見逃せない。

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次にCARICOM、SIDS、PSIDS、AOSISと言った小島嶼国の国際組織。これはそれぞれメンバー国が交差している。例えばカリブ共同体のCARICOMはSIDS, AOSISにも加盟している国があるし、PSIDS(太平洋小島嶼開発途上国)はSIDS(小島嶼開発途上国)とAOSIS(小島嶼国連合)にだぶっている。

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そして先進国である。この中でG77&Chinaは途上国に入るが便宜上ここに入れた。なおG77には 9カ国の島嶼国が入っている(Fiji, Kiribati, Marhsalls, FSM, Papua New Guinea, Samoa, Solomon Is.,Tonga, Vanuatu)

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そして国際NGO。PEWやSSがいなくとホットした。High Sea Allianceという組織は知らなかった。ここにPEWが入っている!

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最後に上記のダータを3つのグループにして全体をまとめてみた。3グループは下記の通り。 1)小島嶼グループ 2)先進国(G77&Chinaが入っているが) 3)国際NGOグループ 全体の34%を占める小島嶼国グループが、約20%の存在感を示す国際NGOと組みながら、即ち数値的には50%の存在感を示しつつ,半数の先進諸国と凌ぎを削っている、そんな図式なのではないだろうか?勿論3つにわけた夫々のグループ内の意見は反対し合ったり、共鳴しあったり、複雑であるはずだ。これは100頁の報告書を読み込んで行けば見えてくるかもしれない。

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