やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

マグロは絶滅?馬鹿の一つ覚え

クロマグロ資源管理の会議が4月に東京で開催され、その情報を探していたがどれも「マグロは絶滅」水産庁が管理できていない、といつもの水産庁叩きの記事しか見当たらない。

唯一、バランス良く書いているのは日経グローカル主任研究員樫原弘志氏の下記の記事ではないだろうか?

クロマグロで国際会議 日本のまき網漁規制が争点に

2017/4/25

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB25H26_V20C17A4000000/

下記のWWFジャパン山内氏のコメントが要点を示しているように思う。

"「一時休漁が必要だといってきたが、今回の試算で初期資源の20%を超すような水準での合意を目指したい」(山内氏)と、利害関係者の歩み寄りに期待を表明した。"

マグロの卵を知らないといつまでも馬鹿の一つ覚えのようにマグロは絶滅、と唱えることになる。確かにその方が記事として売れる。即ちイエロージャーナリズムに打ってつけ。

その最たる記事が、下記のガーディアンであろう。

Japan to exceed bluefin tuna quota amid warnings of commercial extinction

Justin McCurry in Tokyo, Monday 24 April 2017

https://www.theguardian.com/world/2017/apr/24/japan-criticised-exceed-bluefin-tuna-fishing-quota?CMP=share_btn_tw

PEWのアマンダ・ニクソンのコメントが中心の記事だ。上記、樫原弘志氏のような詳細は何もない。ガーディアンのJustin McCurryは会議に参加していないのであろう。

PEWのアマンダ・ニクソンの経歴をPEWのウェッブで見たが水産資源の専門的知識がある様子はない。マグロの卵の数知っているのだろうか?

こういう記事をわざわざ取り上げて水産庁叩きする日本の専門家って「白人コンプレックス」でもあるのではないか?西洋人、魚の事知りません。特にジャーナリストと環境NGOは。

以前産経の佐野さんの記事でも指摘したが、IUCNのマグロのレッドリストへの動きも、IUCNの方に問題がある事が議論されている。

IUCN レッドリスト改善に向けて-

(独)水産総合研究センター、国際水産資源研究所、国際資源研究員 宮部 尚純、 所長 魚住 雄二

http://www.oprt.or.jp/pdf/iucn%20red%20list.pdf

「今回のRed Listに記載されたミナミマグロ、大西洋クロマグロメバチでは、現在でも未だ膨大にある現存量を無視し、減少率のみで評価されたことによって絶滅リスクの大きさをとんでもなく過大評価されたことによって生じた明らかに誤った評価なのである。」(2頁)

アマンダさんや、Justin McCurry記者だけででなく、IUCNも太平洋島嶼国の人も水産資源の事は知らない。知らない人の意見を元にして書かれたニュースばかりが出回っている。

魚住雄二氏の論文では規制の導入と実施が重要と指摘しているがこれは日本だけでなく、自らの力では開発も管理もできないEEZを抱える太平洋島嶼国の課題でもある。

「我々が、力強くはっきりとまぐろ類は絶滅しないと言い続けられるためには、しっかりとした効果的な規制が導入、実施され、文字通り持続的な利用が実現されていることが大前提となることを決して、忘れてはならない。」