やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『コモンウェルスとは何か』山本正・細川道久編著

f:id:yashinominews:20210808115242j:plain

 図書館で海洋関係の本を探していたら偶然見つけた本。

英国のコモンウェルスを理解せずに太平洋島嶼国は、世界の小国問題は理解できないのだ。

 

しかし、このコモンウェルスに関する研究所は少ない。

『コモンウェルスとは何か』(山本正・細川道久編著、ミネルヴァ書房)は2014年比較的最近出版された本である。

 

序章の2節目に

「第二次世界大戦は(中略)1930年代にこれに不満な枢軸国陣営、とりわけドイツと日本が帝国主義的侵略・領土拡大行動によって打破しようとしたことにより起こる。」とあって目が点に。

借りて損した。返そうと思ったが、目次に「チャタム・ハウス」と「太平洋問題調査会」というとても魅力的なテーマがあったので、下記の2章だけ読んだ。

 

第7章 コモンウェルスと委任統治領 旦祐介

第8章 「ラウンド・テーブル」運動とコモンウェルス 松本佐保

 

チャタム・ハウスの起源が研究されて来なかった背景を松本氏は5つの理由を上げているのだが面白い!あのセシル・ローズの支援を受けて設立されたのだ。

チャタム・ハウスの起源となった「ラウンド・テーブル」はライオネル・カーティスが創設したのだが、カーティスはあの「太平洋問題調査会」と協力し、英米の関係を強化しようとした。

新渡戸に会っている。新渡戸がどこかでこのカーティスの事を書いているはずだ。

 

そして、この「ラウンド・テーブル」が委託統治やコモンウェルス、という英国式帝国主義の発展的解消を導いていったのだ。

 

90年代に私が太平洋島嶼国に触れた時、強烈ほどの英国のネットワーク、コモンウェルスの存在を突きつけられた。しかし、当時は英国の影響力はなくなったという主張しか見あたらなかった。例えば中西輝政著『大英帝国衰亡史』だ。

2つ目の修論を、渡辺昭夫先生のご指導で書いた時、このコモンウェルスについても触れたが、勿論充分ではなかった。

小国の在り方として、このコモンウェルスの発展を知ることは重要なのだ。旦祐介氏によれば最近この議論が国家介入という文脈で盛んだという。例えば下記。

 

 

国際信託統治の歴史的起源(一) : 帝国から国際組織へ

五十嵐,元道

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/38375/1/59-6_p295-326.pdf

国際信託統治の歴史的起源(三・完) : 帝国から国際組織へ

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/38919/3/60-2_0005.pdf