やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『ハワイに渡った海賊達』(2007年、堀雅昭著、弦書房)

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 「ハワイの漁業開祖は瀬戸の海賊!」 と2つのブログをあげたが、『ハワイに渡った海賊達』の返却日が過ぎていたので、慌てて後半分を読み終えた。

 筆者の堀雅昭さんは学者ではなく、山口大学理学部を卒業後、一度製薬会社研究の職につかれたようだが、辞めて文筆家として山口を中心に多彩な文章を書いていらっしゃるようである。

ハワイの日系社会と言えば、沖縄からの移民という印象しかなかった。この本で初めて瀬戸内海の海賊の末裔とのつながりはを知った。太平洋の漁業開拓、という視点からも非常に興味深かった。

下記、以前上げた上記2つのブログ以外にこの貴重な本から書き留めておきたい箇所をメモしておく。

山口県和木町の島崎政一郎(明治9年生まれ)がハワイに渡り、サモアに。そしてその子、フランク・ファノ・シマサキはサモアの大酋長になったのだそうである。(p. 102-104)

明治40年、「米人の疑心暗鬼」はハワイでも顕著になる。興味深いのは押し寄せた移民が日露戦争後の失業軍人が多く、また子供を勉強のため日本に帰らせていた事が、日本が戦争を準備していると受け取られたとのこと。p. 156-159

山口県出身の松岡洋右が昭和8年4月にホノルルで演説し、そして5月には郷里で演説している。日米が戦争になるのであれば、ハワイの日系二世は米軍兵士として戦うべき、それが大和民族の武士道である、と語っていたのだそうだ。 p. 218-221

真珠湾の軍港化は1860年から開始し、大正14年(1925年)には米国側の対日戦争の輪郭が露になっていた、と書かれている。ここら辺の米国の軍事的な動きは、オレンジ計画以外(これもおぼろにしか知らない)殆ど知らない。p. 230-231

この本は、現在のハワイの日系人社会、そして太平の漁業問題を理解する上で、かなり重要ではないか?

この本と、芋づる式に見つけた学術ペーパーの情報はこれからも役に立ちそうだし、教えて上げたい人々の顔が次々と浮かんで来る。

 

瀬戸内海の海賊。オソルベシ!