やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて30年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「21世紀の国際法における民族自決の意義」山形英郎

山形英郎、「二一世紀国際法における民族自決権の意義」、名古屋大學法政論集. v.245, 2012, p.517-560

松井芳朗先生の自決権に関する文献を探している中で偶然見つけたペーパーである。2012年なので比較的最近の議論がされているのではないか、すなわちカッセーゼ博士の議論が取り上げられているのではないか、という期待を持って読んでみた。

カー、カッセーゼ、マクミランの自決権の議論を始めに知った当方にとっては「自決権」に疑問を持つ事自体を否定する松井教授やこの山形教授の議論は新鮮である。

この論文の冒頭から引用された佐分晴夫の「自決権は (中略) 経済的独立を獲得するための武器としても機能する」は驚いてしまった。

まさに今議論されている、BBNJや70年代の海洋法条約で太平洋島嶼国が行ってきた事ではないであろうか?

さらに「20世紀国際法」戦争違法化と自決権を中心に体系化されてきた、という記述も初めて知る事で勉強になった。

この論文では自決権の問題は一切触れられていない。それどころか、ウィルソンが唱えた自決権について誤解されたままなのではないだろうか?ウィルソンは世界の民族の数を知らずにヴェルサイユ会議で提唱してしまい、自ら深く反省しているのである。

 

「そんなに民族がいるって知らずに言ってしまったんだよ。毎日のよう彼らはやってくる。。自分が言った事が原因で何百万人もの人に叶わぬ望みを与えてしまった僕の苦悩がわかるまい。」

それでは島嶼国の人々は自決権をどう思っているのか?自由連合という道を選んだクック諸島の自決権に関して今年になって議論されている記事を見つけたので、それを次回メモしておきたい。