後藤新平の「植民政策一班」第一 緒論及び日本植民政策の史的経済的関係。日本の植民政策のアカデミックではない、実践と政策が書かれている。
この本が一般に入手できない事、また植民を研究する日本の学者が後藤と言えば「阿片政策」を批判するレベルである事から、少し詳しく記録しておきたい。
日本の最初の植民政策と実践は台湾植民にある。これを考え実践したのが後藤で、伊藤博文でさえ十全なる植民政策を持っていなかった。また内地植民が北海道で試みられたが黒田長官始め当局者は当中で止めてしまった、と後藤は指摘する。
次に4頁ほどに渡って植民政策と帝国主義について語られている。
まずはルネサンス時期から始まった民族主義とナショナリズムの一致。そして19世紀に起ったナショナリズムが政治世界の一大勢力に。これによって弱者は同化を強いられることに。その例として後藤は、アイルランド、フィンランド、ポーランド、ボスニア、ヘルチェゴビナを上げ、その背景にあるのが極端な愛国主義、即ちショウベニズムである、と。
さらに19世紀の人道主義は、ナポレオンによって厭世主義を経て、勢力的楽天主義へ。これを後藤は「人類幸福の一条件としての戦勝的精力」と現している。これが国民的帝国主義として英国で起こり、日本にも伝播した。日本は英国をデモクラシーの国と信じその植民地運営は理想としていた。これはイギリスのアイルランド問題を知らない論者が将来後悔する認識であろう、と。
世界の植民政策の背景には英国が成功した、各国には「利己的イングランド」と批判された国民的帝国主義があった。日本はこのような歴史的背景を知らず台湾を獲得したので各国から植民能力があるが疑われたのである。
この疑いを覆したのが児玉総督である、と後藤は児玉を立てながら自分が進めた「文明植民政策」の詳細を述べて行く。ここも重要と思われるところを次回メモしておきたい。