やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

IWC脱退をめぐるフランス政府のイデオロギーとナチスの環境保護思想

下記はフランス政府の日本がIWCを脱退したことに対するコメントである。

 

フランスのヨーロッパ・外務省は12月27日、日本の国際捕鯨員会(IWC)脱退表明を受けて声明を発表しました。

 フランスは2019年7月から捕鯨を再開するために国際捕鯨委員会からの脱退を発表した12月26日の日本の決定に遺憾を表明します。

 国際捕鯨委員会は鯨類をめぐるすべての社会的・環境的側面を考慮に入れることができる唯一の機関です。この機関から脱退するという日本の選択は、生物多様性を保護するために極めて重要な時期にあって、環境分野における多国間主義に送られた誤ったシグナルです。

 フランスは1986年の商業捕鯨モラトリアムを支持し、調査捕鯨に反対しています。鯨類は今日、捕鯨による脅威にさらされることは減りましたが、今ではその他の脅威が海棲哺乳類にのしかかっています。例えば偶発的捕獲、船舶との衝突、海中の騒音によって引き起こされる座礁、海洋汚染および海洋プラスチックなどです。

 フランスは地球のこの象徴的な哺乳類を保護しつつ、既存の多国間枠組みを強化することができる解決策を見いだすため、日本との意見交換を継続することを願っています。 最終更新日 28/12/2018

https://jp.ambafrance.org/article14030?fbclid=IwAR3B3s3UUiEBaT5kOyaUjSsnGAb59YSklGWBrtHJKskcM6K9xBosLhaIcbY

 

これが世界第二位のEEZを管轄する先進国のコメントか、と怒る前に気の毒に思うと同時に同情せえも感じる。ツッコミどころ満載のコメントだが、最後の「地球のこの象徴的な哺乳類を保護」の箇所は唖然としてしまった。

「象徴的な哺乳類」に関して産経の佐々木正明さんが資料をリンクしてくれていた。オスロ大学の文化人類学部のアルネ・カラン教授(Arne Kalland)の論文である。これを和訳してくれている方がいる。

スーパー・ホエール − 環境保護運動における作り話とシンボルの利用

Super Whale: The Use of Myths and Symbols in Environmentalism - Arne Kalland -

 

結構長い論文である。学術論文である。なので読むのは疲れるかもしれない。よって私の感性に一番響いた箇所を引用しておきたい。環境保護活動がナチスのそれにつながる、もっといえばホロコーストの「人種」差別にもつながる恐ろしさを持っている事は太平洋に30年関わってきて肌で感じてきた事なのだ。

 

「(環境保護)活動家が作り上げた象徴のシステムと他のシステムでは、2つの点で異なる。 第一に、活動家には狂信的な姿勢がある。 ヒンズー教徒はアメリカ人が牛を食べるのを許容できるが、活動家は日本人が鯨肉を食べるのを許容できない。 このようにして、西欧の文化帝国主義的伝統は行われていく。 第二に、転向者の一群に仲間入りすれば良い思いをすることができる、という点である。 象徴は金で手に入り、それは環境面での正当性や利用価値のある地位をもたらしてくれる。 恐らくこれは、このように世界というものを認識することにおける、最も危ない点であろう。」

 

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