大変面白い論文をウェブ上で偶然見つけた。
草間秀三郎著「ロシア革命とウィルソン主義」。
草間秀三郎博士は2002年、愛知県立大学を定年退職されているがウィルソン研究者、のようである。著書に『ウッドロー・ウィルソンの研究 とくに国際連盟構想の発展を中心として』(風間書房 1974) がある。
簡単にまとめる。
ソ連がロシア革命で世界革命を目指し、アメリカが第一次世界大戦で世界革命を目指していた。ウィルソン主義とレーニン主義は同じだった。しかし、ベルサイユ会議で当初のウィルソンの理想は砕け散り、レーニンも国際連盟には批判的だった。
それがスターリンとルーズベルトになった歩み寄った。スターリンはレーニン主義に、ルーズベルトはウィルソン主義に背向いて接近したのだ。そしてソ連はこ国際連盟に加盟する。1939年のフィンランド攻撃でソ連は連盟から除名されるが、サンフランシスコ会議で「民族自決の原則」を提案したのはソ連である。それがこ国連憲章の1条に盛り込まれている。自決権はウィルソンの14か条の再来と言われた大西洋憲章にあったが当初英米の対立の中無視されていた。
しかし、ソ連は世界人権宣言には大反対であった。個人の自由や権利はソ連にはなかったのだ。
そして1960年、フルシチョフが「植民地に独立を付与する宣言」を提案した。これがチャゴス諸島判決でも取り上げられている自決権の国際法規範への大きなステップとなる。多くの小国が誕生した背景でもある。
その後ゴルバチョフが1988年、28年ぶりに国連に参加し、死文化していた国連憲章7章(平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動)含め国連の機能が活性化する。
草間博士はレーニン主義、ウィルソン主義の自決権や国際協力が結果として多くの途上国を独立させ、数千のNGOが国際社会で活躍し、と賞賛する立場だ。
まさか!とんでもない!
この論文には植民地に関しては書かれていないが、レーニンの反帝国主義、反資本主義、そして自決権の支持であること知れば、レーニン、ウィルソンこそが「植民」を悪者にした犯人であることは容易に想像がつく。
国連って根っこから真っ赤か。
やはりアーサー・ハーマンの"1917: Lenin, Wilson, and the Birth of the New World Disorder"は正しいと思う。まだ読んでいないのだが。