やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

キリバスのEEZと米国の安全保障

 キリバスの台湾断交。あまりにも突然でニュースも出てこない。誰もこの動きを抑えていなかったのだ。それほどキリバスは世界から見放されていた、とも言えるかもしれない。

 あれだけ、アノテ・トン元大統領が島が沈むと世界に訴えていたにも拘らず、だ。

 キリバスが中国の手に落ちた意味はソロモン諸島以上に深刻だ。その広大なEEZとまさに地政学的なポジションにある。

 

 下記の地図はオーストラリア政府のウェブサイトから。いかにキリバスが広大な太平洋をカバーしているかわかるであろう。この日付変更線を超える国家は、ハワイが迎える同じ太陽を前日の日付で迎えることになる。すなわちキリバスという国家の誕生が英国かどこかが作った日付変更線を大きく曲げたのである。

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 次の地図はEEZを示す。

 MACBIO - Marine and Coastal Biodiversity Management in Pacific Island Countriesというウェブサイトから。

 キリバスのEEZ3つに分かれている。その隣接するEEZに名前のない枠があるが、これは米国のEEZになる。さらにキリバスは赤道上に位置する。赤道上にマグロの群れが泳いでいることと、衛星運営上このポジションは重要だ。中国の目的はまさに海洋権益だけでなく衛星、すなわち宇宙権益であることも明確だ。一時日本の衛星追跡基地があったのだ。

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 インド太平洋の安全保障に大きく動いたトランプ政権がまさかキリバスを抑えていないわけがない、と私もソロモン諸島のことしか頭になかった。明日トランプ大統領は豪州のモリソン首相と会う。キリバス、ソロモン諸島の話題が出ないはずはない。