やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ロシア中国が反対する「南極の海洋生物資源の保存」

外国メディアは環境派受けする本件をかなり記事にしています。

 

「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)第38回 年次会合」の結果について:水産庁

 先日南極管理に関する重要な会議が終了した。
 水産庁の上記発表では詳細がわからないので問い合わせ先というところに電話をしたら、懇切丁寧に教えていただいた。
 教えてくれるということは公表しても良いと言う事であろうからここにまとめます。

 2016年に南極のロス海が海洋保護区に制定され環境NGOが大喜びしていた。日本の漁業活動には影響が出ないので日本も賛成したはずである。今回の会議ではウェッデル海、東南極、南極半島西岸における海洋保護区の設置提案が提案されたが合意に至らなかった。

 私の質問は日本の立場である。
 回答は下記の通り。
 基本的に反対はしない。

但し科学的根拠があるか?

モニタリングができるのか?

期間が設定され終了するのか?その際レビューする仕組みがあるのか?

(ここはIWCの経験、即ちモラトリアムが永遠に続き、商業捕鯨がいつの間にか倫理が持ち出されて禁止になって行く、という過去の反省が反映されているのではないか?)
 今回提案されたウェッデル海、東南極、南極半島西岸の3カ所について上記の日本の指摘は全てクリアでもなかった様子。

 

 私のもう一つの質問はSNSで書かれたいたロシア、中国の反対である。
 回答は、ロシアが強硬な反対意見を出していた。中国も反対。日本の上記の質問を協議する前にこの両国が反対し始めるので実際に協議ができなかった。

 

 南極の動きは何となくフォローしてきた。まずは領有権を主張し勝手にEEZまで設定している豪州はほとんど南極の開発能力、実績がない。タスマニアを中国に譲って南極開発基地の足がかりを提供している始末だ。(最近は豪州の対中姿勢は米国に近いので新しい動きがあるかもしれない)米国は南極に関して何もしていないに等しい。ロシアの動きは見えないが中国の進出は目覚ましい。

 現在私が研究対象としているBBNJ(国家管轄圏外の海洋生物多様性)でも国連の会議でロシアが強硬に反対しているのだ。国家管轄圏外とはEEZの外である。そこに海洋保護区を設定する案もある。EEZの外の公海を開発できる国は少ない。米独日位だ。そこから得た貴重なDNA情報で新たな製品を開発するのだ。DNA情報だけでなく、製品、金銭の利益も途上国は要請している。先進国が負う開発のリスクや投資は無視だ。

 南極も領有を主張する国があるが一応国家管轄圏外だ。豪州とニュージーランドは鯨というより、この海域を守るため日本を追い出した、とも言える。ところが今は中国がものすごい勢いで、原子力砕氷船まで作って進出しているのである。
 ペンス、ポンペオの演説で米国が対中姿勢を明らかにする中で国際政治としての南極政策の動きも益々重要であろう。日本で誰かウォッチしてる?