やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

カール・シュミット『現代帝国主義論』(1)

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カール・シュミットの「大地のノモス」の海洋の章だけ読んだが、やはり全文読みたいと思うようになった。しかしなかなか手が出せないで本だけが目の前にある。

図書館の「大地のノモス」の隣に小論集の『現代帝国主義論』と言う本があって何気に借りて読み出したら面白かった。難しい。理解できていないのだが断片的に、深く頷ける箇所が。

1928年から1939年のベルサイユ条約以降の、敗戦国ドイツの国際法学者が見た世界観だ。全体的に米国に厳しく、日本に同情的である。

 

翻訳は、法哲学者の長尾龍一氏。私は長尾氏が法律学者であることを知らずにIPRの関連で彼のラティモアの著書を先に読んでいた。その後、カール・シュミットを授業で報告する際に、長尾氏がシュミット研究者であることを初めて知った。2年前だ。

 

この本(1972年、福村出版)の最後にある「訳者あとがき」も興味深い。

ナチ学者の扇動文をなぜ訳すのか、という非難を覚悟の上で「ヴェルサイユ体制の報復主義、「文明」の名の下で世界支配を正当化せんとする英米の世界政策に関する敗者の側よりの分析は、ワシントン体制下の旧日本、そしてポツダム=ヤルタ体制下の新日本の状況についても参考となるであろう」としている。

その上で長尾氏はシュミットの世界の分割支配を説くラウム理論を否定。シュミットのモンロー原則が1932年と1939年では対極的と見えるほど変化し、「才ありて徳乏しきシュミットの時局迎合性を象徴」とまで書いている。

シュミットは時局に迎合したのか、時局に適応したのか。シュミットをもう少し読んでから、自分なりに考えて見たい。

昨年の12月、雪の降るワイマルを、クリスマスマーケットが開催される美しい街を訪ねた事はシュミットやその周辺の人々を身近にかんる機会であった。

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