やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

オーストラリアのコーストガードとMateship

オーストラリアのコーストガードとMateship

 ウェッブで調べた範囲ではオーストラリアには確かにボランティアのコーストガードしかないようである。1937年に設立されたRoyal Volunteer Coastal Patrolと1961年設立のAustralian Volunteer Coast Guardだ。

 前者は今年2010年1月1日午前6時をもってその長い栄誉ある歴史を閉じ、新しく設置されたVolunteer Marine Resource NSWに統合された。これはニューサウスウェルズ州政府の援助対象となっている全ての海洋ボランティア組織を一つにまとめようという判断の結果。但し現在でも120名のボランティアが朝の6時から18時、毎日12時間ラジオモニタリングのサービスを提供し、救助船クルーは24時間365日の援助体制にある。

 後者は1961年にUSCG予備隊の支援を受けて純粋な市民組織として設立された。現在は全国レベルに展開し、100艘の救助船と147のコーストガードラジオ局を運営している。現在、国内唯一の全国レベルのコーストガード組織のようだ。日本のカウンターパートは海上保安庁なのだろうか?

 自分たちの沿岸を市民自ら守ろうとする背景に、オーストラリア人の特徴の一つ、”mateship”がある。友情、平等、助け合いなどの精神だ。

 アイスランドの火山が爆発し、エルニーニョもあった1783年。飢餓に苦しむ人々に「パンが食べられなければお菓子を食べれば」と宣うた指導者。産業革命で余った人口。ハンカチを盗んだ罪で子供まで流刑にしたイギリス政府。アイルランドのジャガイモ飢饉も忘れてはならない。

 母国政府に見捨てられた人々が地球の裏まで来て新しい国を作ったのだ。政府が守ってくれるなど露にも思わなかっただろう。同じ頃の日本。浅間山が爆発したが指導者が優秀であった。寛政の改革で飢饉を乗り越えたが、海防学者の林子平まで追放してしまった。

 さて、前回、書いたように、9.11以降正式なコーストガードの設立を労働党が主張していたが、政権を取った後はその計画もフェードアウトしたようだ。年間110隻もの違法上陸を見逃しているラッド政権を糾弾すべく、今度は野党となったリベラルが、政府のコーストガードの設立を促しているような気配もある。

 

 他に政府組織Australia Maritime Safety Authority (AMSA)もある。船舶の安全、環境保全、SAR、船舶の登録作業等が業務。

 オーストラリアの海洋を巡るステークホルダーは多様な模様。近々オーストラリア出張を予定してますので整理して再度ご報告できれば、と考えています。

<参考資料>

MARINE RESCUE NSW -Central Coast

http://www.coastalpatrol.org.au/

Australian Volunteer Coast Guard

http://www.coastguard.com.au/

U.S. Coast Guard Auxiliary

http://www.cgaux.org/

Australian Maritime Safety Authority

http://www.amsa.gov.au/

オーストラリアのLiberal

http://www.liberal.org.au/

(文責:早川理恵子)