やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針の一部改正について

昨晩のニュースで見かけたので、メモだけしておきたい。

 

有人離島に国の機関設置、中国の進出念頭に領海、領土の管理強化へ

http://www.sankei.com/politics/news/160726/plt1607260030-n1.html

 

総合海洋政策本部 開催状況

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/kaisai.html

 

太平洋島嶼国の離島問題を扱う中で、日本の離島は?という問題意識を20年以上持ってきた。

しっかり追っていないのだが、内閣府が離島の問題を真剣に協議し始めたのが海洋管理と関係しているはずだ。即ち離島あってこその日本の領海、EEZ なのである。

ただ島があればよい、というわけではない。そこで経済活動が、即ち人が生活していなければ領有権は主張できない。

 

もう一つが、新聞記事が書くように隣国からの脅威、安全保障上の対応であろう。

しかし、当方が気になっていたのが、国家の領有権や安全保障の前に、島に住む住民の安全で幸せな生活である。

 

今回の改正案には「地域社会」即ち住民に視点が置かれ、

ー 継続的な居住が可能となる環境の整備を図り地域社会を維持すること

ー 地域社会の維持のための取組を推進する。

 

且つ

「国内一般旅客定期航路事業等に係る運賃等の低廉化及び国内定期航空運送事業に係る運賃の低廉化について特別の配慮を行うとともに、住民の生活又は事業活動に必要な物資の費用の負担の軽減について適切な配慮を行う。また、住民の雇用機会の拡充を図るため、必要となる負担の軽減について適切な配慮を行い、職業訓練の実施その他の必要な措置を講ずるよう努める。さらに、安定的な漁業経営の確保を図るために適切な配慮をする。」

 

と具体案が盛り込まれている事だ。

離島振興が国交省の中で取り組まれてきたが、「費用対効果」という視点から島は見捨てられてきた背景がある、と当方は認識している。今回の改定は注目したい。

 

ところで、太平洋島嶼国の離島対策はあってなきに等しい。国家自体が自らの力では成り立たないのに離島支援どころではない。

先進国の日本でさえ、やっと動き出したのだ。

対太平洋島嶼国ODA支援策の中に、離島支援も入ることを期待したい。領有権が明確でない島がどういう運命をたどるのか?私たちは今目の前で観ているのだから。