やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島嶼国における犯罪者送還の負担

グアムの刑務所の3分の一が、ミクロネシア連邦からの訪問者、移民である、というニュースは余りにも衝撃が大きくて頭にこびりついている。以前ブログに書いた。

 トランプ政権になって、移民犯罪者への対応が厳しくなったようである。

グアム刑務所にいたパラオ人とミクロネシア連邦のチュック州出身の強姦犯罪者が、送還される事になった。二人は留置されてから約5千万円の費用がかかっている。

犯罪者の存在は受けれ入れ国にさまざまな負担をかけるのだ。

 

Child rapist, molester could be deported

Daily Post Jan 31, 2018

https://www.postguam.com/news/local/prison-terms-of-more-doc-inmates-commuted-ahead-of-deportation/article_8455e6ea-0605-11e8-b188-0bb3843d60eb.html

 

しかし、送還される側の島嶼国法治能力の方がもっと問題である。

下記は、島嶼国の刑務所で脱走が多いのは警備員のフィットネスが足りないから、という笑えない話である。

 

Samoa Correctional says prison guards take fitness seriously

3 February 2018

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/349558/samoa-correctional-says-prison-guards-take-fitness-seriously

 

トンガの研究者が発表した内容を以前このブログに書こうと思ってずっと忘れていたのだが、先進国への移民が多い島嶼国に強制送還で犯罪者を送り返す数が急に増えたのが2001年の9.11という調査内容で、その影響は小さな社会には計り知れず、太平洋島嶼国の秩序が大きく崩壊していった時期と重なっている、という議論であった。

 

人口が急増する太平洋島嶼国、どこも人口の半分とか、中には母国の2倍、という数の移民がオーストラリア、ニュージーランド、米国にいる。現地で犯罪に染まる率も高いようだ。

 

しかし、このブログで散々書いてきたように、また上記のフィットネスの記事が示すように、島嶼国の法治能力には限界がある。悪いケースでは法執行機関自体が犯罪と共謀していることもある。パラオ警察官の麻薬や売春への関与はよくニュースになる。

 

一度、地域の安全保障会議の席で、某島嶼国の警察のトップがオーストラリア、米国、ニュージーランドに対し「もう送り返さないでくれ」と真顔でコメントしたことも記憶にある。

 

今度の島サミットでは島嶼国の労働者受け入れも議論されると思うが、負の部分も受け入れる覚悟が必要なのであろう。