やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋の壁を取り払うトランプ政権

 国境に大きな壁を建てているトランプ政権だが、この度太平洋の壁となりそうであった法案REAL ID Actの壁を取り除いた。

 REAL ID Actとは?詳細は下に「日刊サン」といウェブ情報をコピーしてあるが、9.11以降に制定された新たな法律で2020年10月以降完全施行されることになる。自由連合協定を締結するミクロネシア3カ国は米国への自由な移動が保証されているが、あくまでも米国ではない。この新たな法律が壁になる可能性があったが、この度米領サモアのアマタ議員やハワイのヒロノ議員等超党派グループの努力でその壁が取り払われたのだ。

radewagen.house.gov

 実は太平洋の米領の島々は大統領選の投票権はないが、当初からトランプ支持の共和党のリーダーたちがメディアをにぎやかしており、私も注目していた。何よりオバマ政権で評判が悪かったのがメガ海洋保護区の制定である。米領サモア、サイパン、ハワイも漁業が盛んだ。これを開発したのは日本人、主に瀬戸内海や紀伊半島の漁師さんたちである事は以前小川真和子氏の著書を紹介した。

 

 さてトランプ大統領の海洋政策。海洋科学者がNOAA のトップになった。オバマ政権ではなんとアップルの元副会長が国務省事務次官として海洋問題を、ハリウッドのデカプリオやPEWと組んで進めていたのだ。それが今度安倍政権が支援するパラオのOur Oceanである。やってもいいけど方向性を一気に変えるべきだ。これは次回書きます。

 

「日刊サン」2018-05-26 より

https://www.nikkansan.com/local_news/post/1528754676 

リアルID法とは?

 「リアルID法(Real ID Act)」が成立したきっかけは、2001年9月11日に起きた米同時多発テロだった。
 9・11委員会は、米国の安全を強化する対策として「連邦政府(国)が運転免許証のような身分証明書の発行基準を設定する」ことを議会に勧告し、2005年に「リアルID法」が成立した。
 「リアルID法」は、2020年10月1日に完全に施行される。
 これまで運転免許証(DL)や身分証(ID)の発行基準は各州で異なっていたが、「リアルID法」の成立で、連邦政府(国)が最低限の安全な発行基準を定め、米国全土(テリトリー含む)で統一することになった。
 2020年10月1日から、連邦政府の機関は、「リアルID法」が定める最低基準を満たさない「州の運転免許証/身分証」を、身分証明書としては受け入れない。つまり「リアルID法」に準拠する運転免許証/身分証の提示が、義務付けられる。

 下記の3つの「連邦政府機関」にアクセスする際に、「リアルID」が必要となる。
1 連邦施設へのアクセス
2 米軍基地や原子力発電所へのアクセス
3 連邦政府が規制する商用航空機に搭乗する場合。つまり、米国内線の航空機に搭乗する場合。
 *連邦施設でも対象とならない施設や場合もある。これは後ほど記述する。

<追記1>

2018年12月17日にREAL ID Act Modification for Freely Associated States Actが通過している。今回の動きはこの法律の下の具体的な手続きに関してDHSとの理解が得られた、ということかもしれない。これもミクロネシア3カ国を重要視する(安全保障上の観点から)トランプ政権ならではあろう。

www.congress.gov

<追記2>

これって、個人ID証明に関し連邦政府の権限が強化されるという事だから、ミクロネシア3カ国に対し米国連邦政府の影響力が強化される、という話かもしれない。とここまで書いて『ザ・フェデラリスト』も読まなければと思い出しました。