筆者の長谷川 貞之氏は民法、信託法が専門で、日本大学法学部教授。
アダム・スミスの植民地論 / 長谷川 貞之
横浜商大論集 13(1), p28-53 (1979-12) 横浜商科大学学術研究会
スミスの「国富論」は税金や貿易のことに関して非常に詳細に書かれているのだ。長谷川氏はその分野のご専門でないだろうか?植民地への課税、貿易不均衡について国富論の詳細を追っている。
英国が米植民地に要求したのはお茶の関税だけではなかった。1763年に英仏7年戦争が終わりそこでイギリス帝国が完成する、と同時に崩壊も始まる、と長谷川氏は書いている。戦争で負った債務の回収も含め1764年からさらなる米植民地への負担を要求した。これが米国の独立運動につながるのだ。しかも「代表なければ課税なし」 son of liberty はここから始まる。
まさに『国富論』は植民地を扱ったものだが、単なる持論ではなく社会科学体系、経済理論の一部としての論文である、と書かれている。ここは矢内原の植民の定義と同じだ。
続く二節で分業論=市場論、資本蓄積論=産業構造論をまとめている。
チンプンカンプンだが要は独占はよろしくないという話、だと思います。特に航海条例による植民地貿易の排他的独占の非効率性の箇所は興味深い。英国海軍力増強のための条例のようだが、英国は情報通信に関しても排他的独占政策をとっており、これが世界の公共財産の秩序に影響を与えてきた。
もう一点、英国の米植民地政策では競争をさせないために、米のマニュファクチュア=製造業の製造活動を禁止したり抑止したりしていたのだ。米国の独立運動の一翼をになったのはこの製造業者たち、だったそうだ。
WTOの議論とスミスの『国富論』多分、同じような議論なのではないか?誰か論文を書いているであろう。自由競争だからって何でもして良い、という話ではない。そこにはルールと秩序が必要だ。海洋の自由も誤解している人が多いが何をしても良い、という話ではないのだ。
アダム・スミスの植民論、もう一本書きます。