2010年5月2日のブログで御紹介させていただいた防衛大学の福嶋輝彦教授が2009年に2つのペーパーを発表された。
(櫻川明功他『日本外交と国際関係』内外出版、2009)
”Region is Thicker Than Blood?: The British Empire in Australia’s Foreign Relations”
(東京大学アメリカ大平洋研究 第9号、March 2009)
昨年、福嶋先生より直々にコピーをいただき早速読ませていただいたことが、ミクロネシアの海上保安案件を進める上で大変役に立っている。
前者は、豪軍兵捕虜に対する日本軍のアンフェアな待遇などを理由に、戦後オーストラリアが強い反日感情を持つ中で、1957年の日豪通商協定、1976年の日豪友好協力基本条約、そして2007年の日豪安保共同宣言の流れを追い、ギクシャクはありながらも両国の関係が円熟していく様子が記されている。その中でのAPECであり、東アジア共同体がある。APECは「日豪提携の一大傑作」であり、東アジア共同体は日本がオーストラリア、ニュージーランドの参加を常に支持している。そして流暢な中国語を話すラッド首相は広島の原爆慰霊碑を訪問した数少ない西側諸国の首脳になった。そのラッドが提唱するのが広義の安全保障を扱うAsia Pacific communityの創設だ。戦後、日豪関係は、経済→文化→安全保障の道を辿ってきた、というとになる。
”Region is Thicker Than Blood?”はオーストラリアのイギリスとの関係を見ながら、同国のアジア太平洋への仲間入りの模索を追っている。オーストラリアにとって最大の貿易国であったイギリスが1961年EECに加盟する。1957年の日豪通商協定や白豪主義から多文化社会への変身にはそのような背景があった。福嶋先生は英連邦メンバー国であることが安全保障を確保する、即ち非英連邦メンバー国である日本やインドネシアとは安全保障協定が必用だが、クリケットやラグビー文化を共有する国とは必用ないのでは?と提議。そして戦後50年、オーストラリアが粛々と関係を構築してきたインドネシアや日本同様に、中国との関係構築も親中派のラッド政権は進めるだろう、締めくくっている。
さて、この英連邦ネットワークはクリケット、ラグビーだけでなく、教育、言語、金融等々共通の制度で結びつけられている。オセアニアではオーストラリア、キリバス、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニュージーランド、バヌアツ、パプアニューギニア、フィジーが英連邦である。海洋を巡る制度も共通するものがあるのかもしれない。
ミクロネシア3国は非英連邦であり、ケチャップ、野球等々日米と共有の文化がある。
<英連邦の特徴>
■54ヵ国の加盟国
■加盟国は南半球、北半球を含む地球上のすべての大陸とすべての海洋をカバー
■世界の4分の一の国家と人口を抱える
■世界のほとんどの宗教と、人種と政治的思想をカバーする
■豊かな国と貧しい国、大きな国と小さな国が含まれる
■共通の教育システムを持っている
■英語が共通言語である
■小国の3分の2をカバーする
(文責:早川理恵子)