やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

鴨川に響くモーツアルトのレクイエム

<以前書いたモーツアルトのレクイエムのブログを鴨川混声合唱団のニュースレターにと声をかけていただいたので、少し書き直し、モーツアルトと光格天皇の事を追記しました。>

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f:id:yashinominews:20210404201126j:plain 光格天皇御胞塚

鴨川沿いの道を選んで同志社大学まで徒歩で通っている。

この4月から国際法の権威、坂元茂樹教授の下で2つ目の博論として海洋法を学ぶ機会を得た。門前払いを覚悟で門を叩かせていただいたら、ご指導いただける幸運を得たのだ。

6月の日差しが厳しくなってきた頃、川端通りの信号待ちで日陰に入った。そこは老舗のお米屋さんの前であった。そのガラス窓に

「モーツアルトのレクイエムを一緒に歌いませんか?」

というポスターが貼ってあるのが目に入った。

モーツアルトのレクイエム。音大時代に歌った。もう30年も前のことである。懐かしい。何気にiPhoneで写真を撮って後で詳細を見ると練習場も通学路上にあるではないか。シューベルトのリートやイタリア歌曲は弾き歌いで一人でも歌える。しかしレクイエムは一人では歌えないなあ。

思い切って練習を覗いて見ることとした。 同じくらいの年齢か少し上の方ばかりだ。

「入りなさい。入りなさい。」

と、とても京都人と思えない歓迎を受けた。京都に暮らして数ヶ月。京都の人はよそ者に冷たいということを経験として理解してきた頃だった。だから本当は見学だけのつもりだったのだが、思いもよらない歓迎と勧誘に、京都人の意外な一面に、気持ちが動いた。それに千年の都の京都とモーツアルトという組み合わせも興味深い。京都言葉の人がモーツアルトを、ラテン語を歌うとどうなるのだろう?という変な興味が湧いた。

これは偏見である。東京言葉だろうと、沖縄の方言だろうと、モーツアルトを歌うことになんら変わりはない。 最初は緊張したが、一度歌うと旋律の記憶が蘇ってきた。やはりレクイエムは素晴らしい。それは聴くことよりも歌うことでしか味わうことのできない感動がある。楽才のモーツアルトが自分の死を目の前に書いた曲である。それにこの鴨川混声合唱団は、音楽が好きな人だけが集まって、音楽を楽しんでいる。

自分の音楽人生で経験したことのない空間だった。音高受験準備を始めた中学生から音楽を本格的に勉強してきたので、音楽を楽しむというより義務として、厳しい環境で学んできたのだ。それはそれで良かったと思っているが、音楽に向かうことがプレッシャーに感じる時が多いのも事実だ。

京都とモーツアルト。モーツアルトが生き、レクイエムを書いた時代、京都は光格天皇(在位1779年 - 1817年)の時代だったのだ。学問にすぐれ音楽をたしなんだとされる光格天皇がモーツアルトを聴いたらどう思われるであろう?

光格天皇御胞塚が、京都鴨川混声合唱団の練習場の目の前にあるのは偶然だろうか? 見学した日から半年近くが過ぎる。今はこの練習に参加するのが楽しみになった。通学路途中のモーツアルト。鴨川沿いを歩きながらレクイエムを口ずさむようになった。

ラテン語の響きが一千年の都の歴史とつながり、鎮魂の祈りが先に旅立った家族や友人、そしてこの地で果てた多くの命に届くような気がする。 ロームシアターでの発表会は二年後である。

♪団員募集中♪ 2年後の演奏会をめざしています 京都鴨川混声合唱団は、新しい仲間を募集しています。 経験は問いません。初心者大歓迎!! お気軽に お越しください。 毎週月曜日 午後6:30~9:00 鴨沂会館で練習しています。 https://www.kamokon.com