やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

America's Pacific Island Allies - RAND 報告書

数週間前に米国のシンクタンク、RAND Corporationから米国が自由連合協定を締結するミクロネシア3カ国に関 する報告書が出て、安全保障、アジア太平洋、インド太平洋関係者はみんな読んでいた。

 ざっと読んだがかなり大雑把な、簡単にまとめられた内容で、この問題を取り上げた国防省が連邦議員の関心を引くための第一歩、という印象であった。

 多分このブログを読んでくださっている読者はこの報告書にある100倍位の情報と理解を、当該地域に持っていると思う。

 しかしそれも無理からぬことで、私が2016年12月号の正論に書いたようにオバマ政権下の国務省職員は私に「本当はミクロネシアを日本に返したいんです。連邦議員もそう思っています。」と言うほど関心が低かったのだ。この記事はまだ産経新聞のウェブで読めます。

 問題は日本のパートだ。史実が嘘ばかり書かれている。日本の南洋統治は矢内原を読めばすぐにわかるのに一切無視されている。南洋統治時代、地元の人口は増加し、教育・医療・福祉が向上しただけでなく、多くの沖縄の人が移民し、一大水産産業が発展したのである。そんなことには微塵も触れず日本が閉鎖的に軍事利用したような記述だ。

 最近の日本との関係も、島サミットの背景も何も理解していない。勿論私が立ち上げたミクロネシア海上保安事業の話も表面的にしか触れていないし、安倍政権が前回の島サミットで大きくインド太平洋構想と海洋安全保障に舵を切ったことも触れてはいるが意味を理解していない。

 この報告書は日米同盟の意味もインド太平洋構想の意味、すなわち日本と米国の基本的立ち位置を誤解しており、将来に障害を残す、と知り合いの執筆者がいたのでメールしておいた。

 と、ここまで書いて、この意味を知っているのは私だけである事に気がつき、やはり以前書き出した「一人で立ち上げたミクロネシア海上保安事業」のブログを英和で書かなければと思った次第。