やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

アダム・スミスの植民論(5)水田洋

 同志社大学の「CiNii Articles」というサイトで「スミス」「植民」といキーワードを入れて出てきたのが34件の論文の中に水田洋氏の論文もあった。アダム・スミス研究の世界的権威である。(水田洋氏の本は以前読んだことがある。今99歳でお元気なようだ)

アダム・スミスとアメリカ植民地--植民地論のカライドスコ-プ / 水田 洋

名城商学 43(4), p168-138 (1994-03) 名城大学商学会
 
 他の論文と違ってスミスの植民論というより、スミスがどのように「国富論」を書いたか、ベンジャミン・フランクリン、バークなど当時の影響ある人々との交流や主張の違いなどを詳細に分析しながら書かれている。
 当時から、イギリスの中に米国いおける黒人奴隷、インディアン先住民に対する人道的対応の批判、もしくは支持のさまざまな意見があったことは興味深い。
 
 スミスは米植民地を連邦か合邦か、議論していたようだが、結局どちらにもならず分離してしまった。ともあれ、スミスが「国富論」を書いた頃は多くの植民論の文献が出版されたようである。そして100年後の日本はこれらの文献を必死に和訳して研究したのであろう。
 米植民地はかなり繁栄していたのだろう。議論の中には首都をロンドンからニューヨークに移転する案もあったとは知らなかった。しかしもし、そうなった場合王制はどうなるのだろう。ニューヨークはチャールズ2世の弟、ヨーク公から名前を得た地ではあるが。。