やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

安倍総理のハノーバースピーチ

海洋問題はこれから本格的に学術的に!勉強するが、当方の最初の博士はICT政策なので、実はこの件が非常に気になっていた。 Facebookに記録しても検索機能がないので埋もれてしまう。 ブログに記録しておきたい。 なぜ安倍総理はハノーバーへ行ったのか? IC…

太平洋に延びる中国の海洋シルクロード

昨日、太平洋分割論は現実に、と書いたがここ数週間で一気に、中国の「海洋シルクロード」戦略が太平洋の延長されたようだ。 まずニュージーランドがこの構想に署名した。 NZ can play part on Silk Road By Siah Hwee Ang 28 March 2017 http://m.nzherald.…

パラオ海洋保護区の行方(4)

数日前、ブログでも取り上げた下記の米本昌平教授の記事で、日本政府が発展途上国に対し推定で総額5千億円相当の排出枠を買い取った、と言う指摘を読んでから「もしや、もしや」と考えていた。 「トランプ大統領の一撃で温暖化交渉の理想主義は剥落した 京…

日本パラオ友好協定の可能性

私がパラオの、またキリバスの大統領であれば、資金メカニズムである海洋保護区を進めていたであろう。それほど自決権の代償は、特に太平洋の孤島の小島嶼国にとっては大きいのである。 日本パラオ連合ー 羽生前会長から頭がおかしいとおもわれるか誰にも言…

太平洋分割論は現実に - 第二列島線を超える中国

The Page, 中国の戦略「真珠の首飾り」とはどういうものか?2014.09.26 から https://thepage.jp/detail/20140926-00000021-wordleaf 2008年3月、米国政府の公聴会で太平洋司令軍キーティング司令官が、お酒の席とはいえ中国から太平洋分割案を提案された事…

パラオ海洋保護区の行方(3)

パラオの海洋保護区(EEZの20%だけ国内漁業を許可し、80%は商業漁業禁止)が、海洋保護という美名の下の資金メカニズムである事がさらに明確になってきた。 パラオ議会( Olbiil Era Kelulau)はこの海洋保護区の資金メカニズムである環境税(Environmental…

パラオ海洋保護区の行方(2)

フィジ−の閣僚が、今ほど海洋問題がゲームチェンジャーになっている時期はないと、言っているがいったい流れがどのように変わるのか? パラオのメガ海洋保護区法案は、環境税、即ち資金メカニズムとセットなのだが、その環境税を破棄するよう議会が可決、現…

温暖化交渉と海洋問題

「京都議定書が外交上の大失策であったことは、政府関係者の間では共通認識である。だがその原因を一つに絞ることはできない。日本人の大半が京都という美名に酔いしれ、議定書は国際政治上の道具でしかないという当たり前の事実が、目に入らなかったのだ。…

外務省の証拠隠滅工作か?(追記あり)

実は来月政治家の方達に太平洋の海洋問題をお話する機会をいただき、パラオのシーシェパードリーガルを外務省が放置していた事をきちんと指摘しようと、資料をまめようとしたところ、在パラオ日本大使館のウェッブからその記述が消えていた! パラオのシーシ…

海洋問題ー太平洋島嶼国のプロパガンダとレトリック

太平洋青年協議会の面々。海底鉱物開発の犯罪をストップさせよう!一体どこからこのような発想を得たのか? およそ太平洋島嶼国の伝統的知識や文化と関係のないEEZとその外の公海の管理に関して、当該地域の政府地域機関の太平洋諸島フォーラム(以下PIF)が…

パラオのシーシェパード、日本大使館の対応に疑問

ま、まじで在パラオ日本大使館大丈夫だろうか? 下記の記述を同大使館の2016年10月のサイトに見つけた。シーシェパードと名前を出して、しかもワトソン君が発案者のシーシェパードリーガルが、あのシーシェパードと関係ないってわけないよね。 外務省大洋州…

パラオ海洋保護区の行方

海洋保護といより資金メカニズム、即ち新たな環境税と信託金設置を目的としたパラオのメガ海洋保護区。ここに来て環境税が議会で却下となった。 Palau Senate Panel Throws Support behind Tourists Fee Repeal March 21, 2017 https://www.pacificnote.com/…

頼もしい台湾のパラオ支援

2013年大型台風ハイアンがパラオを襲ったとき、軍艦を派遣し災害支援をしたのは自由連合協定を締結する米国でも、友好国日本でもなかった。台湾である。 独立以来台湾との外交関係を一貫して維持するパラオ。最近の中国と台湾の緊張関係の影響もあるのだろう…

トンガ、バヌアツに延びる中国の大型箱モノ支援と軍事進出

バヌアツに中国が軍事基地建設を検討しているとの噂が耳に入りニュースをチェックしてみた。 バヌアツには中国の支援で16億円位の巨大なコンベンションセンターが昨年完成していた。建設したのは中国のJiangsu Provincial Construction Group Ltd. New Natio…

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』五十嵐正博著(番外編)

戦後小国が誕生した背景として国連決議1514(植民地独立付与宣言)と1541が重要であることは何となく頭にある程度の理解である。『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』にも一節が割かれている。もう一冊これに関する事が議論されている博士…

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』五十嵐正博著(3)

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』3回目。後番外編で終わりにします。 同書7章で提携国家の対外的権能として条約関係の項で国連海洋法を取りあげている。クック諸島の例である。(同書284−290頁) 1975年のカラカスの国連海洋法会議で…

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』五十嵐正博著(2)

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』には、クック諸島、西インド諸島、そしてミクロネシア連邦が、提携国家、即ち自由連合の道を歩む詳細が書かれている。 2度読んで強く印象に残った箇所。 クック諸島の自決権が、クック諸島の人々から…

BBNJへ向けた太平洋島嶼国の戦略

3月27日から4月7日に開催されるBBNJ準備会合に向けた太平洋島嶼国のワークショップが3月13−14日フィジーで開催された。 Pacific Ocean Alliance Workshop on an international legally binding instrument on the conservation and sustainable use of m…

『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』五十嵐正博著(1)

「自由連合」につて五十嵐正博著『提携国家の研究ー国連による非植民地化の一つの試み』(1995年、風行社)がある。 この本は1993年に豪州のモナシュ大学で、多分10年近くをかけて五十嵐氏が書かれた英文の博士論文”Associated Statehood in International L…

島嶼国の生きる道ー麻薬、ギャンブル、タックスヘイブン

同志社大学博士後期の入試での面接。 博論の理論枠組みに現代国際法で自明となっている「自決権」self-determinationを取り上げたいと計画書に書いた。面接官からその点を質問された。数千、数万から数十万の人口を抱える小島嶼国の現実。即ち麻薬、ギャンブ…

トランプ政権とミクロネシアの移民問題

トランプ政権の対ミクロネシア3カ国への対策。即ち自由連合協定を締結する3カ国がどうなるのか、気になっている。 その中でも移民の問題だ。 現在両国はある程度の条件をクリアしていれば自由に行き来できる。visa-free アクセス。 条件とはパスポートの期…

なぜ財団やNGOはメガ海洋保護区を支援したがるのか?(追記あり)

同志社大学博士後期の入学試験は語学と面接である。 一夜漬けならぬ半年漬けの準備だったので、きっと窮地に追い込まれるだろうとドキドキであった。 ところが、多分面接時間の半分位が坂元教授の貴重な講義だったのである。 勿論面接室にメモ帳を持ち込む事…

LAと片岡義男

今年、始めてLAを訪ねた。古い友人の住む西海岸。 マリブビーチやサンタバーバラなど有名な美しい海岸の町も訪ねた。 ちょうどトランプ政権の移民問題が重なりカリフォルニアが違法移民の州である事を背景に感じながら。 そしてスターウォーズのレイア姫を演…

トンガ王国の民主主義と報道の自由

民主主義の道を進むトンガ王国だが、民間出身の首相が政府を支援しない公営放送局を非難し、閉鎖を指示したという。(実際に閉鎖される事はないであろうがとのこと)このポヒヴァ首相、権力を握る前は自らが表現の自由を讃え、王室に厳しいコメント出してい…

BBNJの主人公は島嶼国だった!

BBNJの議論。現在までの2回の準備委員会の議論をまとめた非公式のテキスト案(2017年2月28日付け)が下記からアクセスできる。(100ページ以上、1000個以上の要素が提起されているという) Chair’s non-paper on elements of a draft text of an internatio…

環インド洋連合サミット開催

The Indian Ocean Rim Association (IORA) 現在21のメンバー国と7カ国の対話国を抱える インド洋はこのブログ、即ち当方の守備範囲ではないが、チャゴス諸島のメガ海洋保護区の件で急に気になりだした。 yashinominews.hatenablog.com yashinominews.hatenab…

『母なる天皇-女性的君主制の過去・現在・未来』明治以降

『母なる天皇-女性的君主制の過去・現在・未来』の英文原著2006年発行 ベン=アミー シロニー著『母なる天皇-女性的君主制の過去・現在・未来』の後半半分は明治以降から現在までの皇室について書かれている。 前半は私が皇室の歴史を知らない事が理由かも…

再び「日本・パラオ連合」(追記あり)

なぜ、シーシェパードが再度パラオに入ったのか?しかも海洋の法執行という一番近づいて欲しくない部分に近づいたのかここ数日考えている。 小国、法執行能力に限界がある。(というか国家運営自体に) 国際海洋法専門家なんか一人もいない。いるのは米国の…

南極条約とシーシェパード

ベルギン博士が、豪州政府はシーシェパードの寄港を拒否すべし、と主張する根拠が南極条約。 その文章を確認してみた。 南極条約の前文にある。 和文 「南極地域がもつぱら平和的目的のため恒久的に利用され、かつ、国際的不和の舞台又は対象とならないこと…

『母なる天皇-女性的君主制の過去・現在・未来』江戸時代の天皇

明治維新を迎える前の、即ち江戸時代の天皇はどうでったのか? 以前疑問に思って、ある教授に伺ったところ、そんな質問をして云々と怒られた事がある。聞き方が悪かったのか。それ以来気にはなるものの誰にも聞けず、良い資料にも出会えずいた。 ベン=アミー …