やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

新渡戸稲造と矢内原忠雄

アダム・スミスの植民論

アダム・スミスの「国富論」の中にかなり長文の植民を議論した章があることを知っている人に今まで出会ったことがない。みんな、「国富論」を読まないで「ああ、見えざる手ね」と知ったかぶっているのは100%確実である。 日本の植民政策、即ち新渡戸と矢…

『ロシア革命とウィルソン主義」草間秀三郎

大変面白い論文をウェブ上で偶然見つけた。 草間秀三郎著「ロシア革命とウィルソン主義」。 草間秀三郎博士は2002年、愛知県立大学を定年退職されているがウィルソン研究者、のようである。著書に『ウッドロー・ウィルソンの研究 とくに国際連盟構想の発展を…

有本香さんから反論いただきました!

これは嬉しい反論なのです。 まさか私のブログが百田さんに読まれることはないであろう、と下記のブログを書いた。ところが『日本国記』を編集されたジャーナリストの有本香さんから反論をいただいた。 百田さんは併合は植民ではない、とは言っていらっしゃ…

東北紀行(水沢篇4)sponsored by 吉野作造

あの頃の日本人はすごい。命がけで生きて来た。高野長英47歳の人生。 水沢の高野長英記念館。小雨が降る中、無理して行った場所だったが、行ってよかった。後藤の人格を形成したのは大叔父、高野だ。 高野長英、横井小楠、渡辺崋山。単なる西洋かぶれではな…

東北紀行(水沢篇3)sponsored by 吉野作造

後藤新平の生家がある細い道、吉小路には2.26で凶弾に倒れた斉藤実、後藤の大叔父高野長英が生まれ、偉人の吉小路、と呼ばれている。 ここの喫茶店であんみつをいただきました。

東北紀行(水沢篇2)sponsored by 吉野作造

後藤記念館の隣は、正力松太郎が建てた後藤伯公民館がある。日本で最初の公民館だそうだ。後藤と正力の関係は結構知らない人がいる。乱暴にまとめると1923年の皇太子襲撃事件で警視庁にいた正力は責任を取って辞職。読売新聞設立のため後藤の資金援助を受け…

東北紀行(水沢篇1)sponsored by 吉野作造

矢内原、新渡戸、後藤と日本の植民政策を辿って行くと断然後藤の人間の器の大きさに圧倒される。多分25歳の笹川良一青年の人生を変えたのは後藤である。良一は、吉野作造先生の紹介で会いに行ったのだ。後藤は震災後処理で四面楚歌になっていた頃だ。 さてい…

東北紀行(盛岡篇5)sponsored by 吉野作造

北上川のビクトリア通り沿を歩く。 大正天皇ご結婚記念で建てられた公会堂。新渡戸が好んだメニューを置くレストランが最近まであったそうだ。 北上川沿いには多くの縄文土器が見つかっている。新渡戸の先祖はこれら縄文の人々との植民を進めたのであろう。 …

東北紀行(花巻篇)sponsored by 吉野作造

昨日、生まれて初めて救急車にお世話になった。東北の旅の疲れが全身に来ているのがわかる。新渡戸の盛岡から後藤の水沢への途中。新渡戸の父祖が水田開拓をした地「花巻」がある。ここはパスしようと思っていた。新渡戸稲造には直接関係ないと思っていたか…

東北紀行(盛岡篇3)sponsored by 吉野作造

盛岡最後の写真は盛岡城隣の櫻山神社。 ここを稲造少年が走り回っていたのであろう。稲造少年がひょこっと出てくるような気がしたが、いたのは河童のお化けだった。柳田國男が地域研究を始めたきっかけは新渡戸だったのだ。「遠野物語」も新渡戸がきっかけだ…

東北紀行(盛岡篇1)sponsored by 吉野作造

東北の旅。まずは新渡戸稲造の生誕の地、盛岡まで来た。東京で新幹線を乗り換え、京都からあっという間だ。 稲造は9歳まで盛岡にいたのだ。後藤新平同様、腕白な少年だったらしい。 新渡戸を訪ねての盛岡情報はあまりなく、駅の観光情報センターに寄ったが…

東北紀行 Sponsored by 吉野作造

久しぶりに、多分数十年ぶりに東北を訪ねた。 きっかけは吉野作造さんだ。作造さんの誕生の地、古川で人材育成セミナーが開催されると阿川尚之先生から伺った。 「年齢制限は?」 「そんなのありません」 「では希望します。」 古川は吉野作造さんだけでなく…

併合は植民か?アダム・スミスの植民論『国富論』

日本の植民政策は、後藤、新渡戸、矢内原が構築してきた。まだ他にもいるかもしれないがこの3者は外せない。この数年(今ブログを確認したら2014年11月にカテゴリーを設けている)新渡戸、矢内原、そして後藤を中心に文献を散漫的に読んではブログにメモを…

東京帝国大学植民政策講義(8)新渡戸博士の講義 第五章植民地獲得の方法

東京帝国大学植民政策講義、最後に書いたのが今年の3月。なんてまあ私の根性は弱いのであろう。あれから5月、すっかり忘れていた。 百田さんだけでなく、「学者」を名乗る人でも日韓併合の「併合」は「植民」ではないと書いているのを見て驚愕した。学者だか…

日本はセンチメンタルな植民者か?

日本統治時代の朝鮮の教科書 というサイトがある方のFBで紹介されて、日本人は「センチメンタルな植民者」であるとのコメントがあったので、これは新渡戸の植民政策を学んでいる者として聞き捨てならぬとセンチメンタルと思う理由を尋ねた。植民地の人民を日…

America's Pacific Island Allies - RAND 報告書

数週間前に米国のシンクタンク、RAND Corporationから米国が自由連合協定を締結するミクロネシア3カ国に関 する報告書が出て、安全保障、アジア太平洋、インド太平洋関係者はみんな読んでいた。 ざっと読んだがかなり大雑把な、簡単にまとめられた内容で、こ…

<読書メモ>『太平洋戦争とアジア外交』波多野澄雄著

2019年6月、珊瑚礁海戦の連合軍後方基地、南太平洋のペンタゴンと呼ばれたニューカレドニアのヌーメアで「日本の戦争目的は東亜の解放でした」と叫んできた。オーストラリア国立大学主催の学会でテーマが「自決権」だったのだ。 インド太平洋構想の歴史的背…

読書メモ『大東亜戦争と「開戦責任」』中川八洋著

波多野澄雄先生のアジア主義の本を再度図書館に借りに行ったら隣にあった本である。面白くて一気に読んでしまった。多分江崎先生のコミンテルンの本を読んでいなければ「トンデモ本」と思ったかも? そもそも意味不明だったかもしれない。 江崎先生の主張と…

ポートモレスビーと東亜の解放

大凡30人のバングラデシュ人を乗せたバヌアツ発の飛行機は4時間も到着が遅れ、乗り継ぎのシンガポール行きの飛行機を逃してしまった。パプアニューギニアの首都ポートレスビーに思いもかけず一泊する事となった。 そこは2002年パプアニューギニアの国父ソ…

ニューカレドニア便り(5)西パプア、カナク、ブーゲンヴィルの分離独立

西パプアを結ぶインフラ計画 今回の会議は、西パプア、ニューカレドニアの先住民カナク、そしてソロモン諸島のブーゲンビルと、今まさに分離独立の動きがある地域の、しかもその研究というより運動をしている人たちの発表が半分くらいあったように思う。正確…

ニューカレドニア便り(4) 南太平洋のペンタゴンで語る東亜の解放と自決権

学会会場となったニューカレドニア大学 太平洋政治学学会がニューカレドニアで2019年6月25−27日開催された。テーマは自決権で現在私が取り組んでいる論文の主要テーマだ。具体的には太平洋の海洋ガバナンスを自決権の理論枠組で分析する内容でその限界を…

読書メモ『共産主義者宣言』

阿川尚之先生の授業を聴講していなければマルクスを読む機会はなかったであろう。 『共産主義者宣言』 平凡社の文庫は千円もするが薄くてあっという間に読める。そしてこの突っ込みどころ満載のつまらない文章が何千万人もの人々の命を奪ってきた事を思うと…

台湾関係法40周年CSIS会議 ー 台湾は米国より日本が好き!

www.youtube.com 昨日から見ている、台湾関係法40周年をめぐるCSISの会議。4:01:00 あたりから必見!BI-KHIM HSIAO議員の質疑応答で、日本と台湾の特別な関係を控え気味に語っている。ちょっとアメリカがかわいそうなくらい。。 台湾人が一番好きな…

百田さん!植民は悪い事、とは限りません!

『日本国記』を書いた百田さんまでがあれは、日韓併合は植民ではなかった、と言う。 植民は悪いことではないし、日本はかなり良い植民をしたんです。とSNSで呟いたら、郵便学者の内藤陽介先生が私が言いたい事、モヤモヤ、イライラを百倍位的確な言葉で説明…

東京帝国大学植民政策講義(7)新渡戸博士の講義 第二章植民の理由・目的・利益

新渡戸の植民政策講義、第二章 植民の理由・目的・利益は10項目もあるのでざっと2、3回でまとめようと思っていたが項目によってはかなり重要で、初回に読んだ時に書き込んだ鉛筆の線やメモがたくさんある。 慌てずゆっくり読んでいきたい。 まずは 第一項 …

石渡茂「植民地」研究の一考察 ー矢内原忠雄の「植民論」をめぐって

偶然見つけた矢内原の植民論に関する論文。 石渡茂「「植民地」研究の一考察 ー矢内原忠雄の「植民論」をめぐって」国際基督教大学学報. II-B, 社会科学ジャーナル 号 32 ページ 57 - 71 発行年 1994-03 https://icu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main…

東京帝国大学植民政策講義(5)新渡戸博士の講義(大内兵衛の解説)

手元にある新渡戸全集第4巻は昭和59年2月15日の版です。初版は昭和44年11月25日。この全集の解説をマルクス経済学者の大内兵衛が書いている。大内兵衛も東京帝国大学法科大学で大正元年から二年までこの講義を聞いている。(それでもマルクス主義者になった…

東京帝国大学植民政策講義(4)新渡戸博士の講義(再開)

新渡戸の東京帝国大学植民政策講義、11月下旬に立ち上げたにもかかわらず、2月以上も棚上げにしましたが再開します。 忘れていたわけではなく、12月は米欧州(ワイマル含む)訪問、1月はワイマル共和国の林先生の本に衝撃を受け(個人的にも多忙を重ね)、2…

「日本・1945年の視点」三輪公忠著ー読書メモ

波多野氏の下記の論文に以前新渡戸関連で手に取った「日本・1945年の視点」からの引用があった。重光の大東亜共同宣言についてだ。戦後のNIEO(新国際経済秩序)にもつながる内容だという。(164頁)そうであれば大東亜共同宣言、日本の戦争目的が今の国際秩…

新渡戸の植民政策と日本の植民地研究

新渡戸の植民政策論を弟子の矢内原が1942年9月に発行した事を(書籍の発行は1943年のようである)、年末に敢行した英国訪問直前に知ってこのブログに「東京帝国大学植民政策講義」の項目を立た。新渡戸の植民政策を少しづつ紹介して行きたい。 yashinominews…