やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋法

島サミット特集:安倍総理スピーチの分析評価 -やっと漁業の話

1997年に開始した島サミットは以前書いたように、プルトニウム輸送に対する執拗な太平洋諸島フォーラムへの対応として、主に外務省と電事連が仕切って来たのである。 2011年までは。。 それが本来の島サミットに方向を変えたのが2012年の第6回島サミット。こ…

島サミット特集:安倍総理スピーチの分析評価 - 危険思想「青い大陸」(追記)

「首相の国サモアで先ごろ会議を開いた太平洋諸島フォーラムが,「青の大陸」という言葉を打ち出しました。 その意味は,「太平洋」。青くて広大な海への,敬意に満ちた言葉ではありませんか。 「緑を守れ」というのと同じ情熱を込め,私たちはもっと,「青…

海洋基本計画と安全保障キーワード数

海洋基本計画に出てくるキーワード数をざっと調べた。 今回の基本計画の重要課題の「安全保障」第1期では5回、第2期では8回。そして3期は79回と圧倒的に多い。 そして3期の特徴は担当省庁が明記されていること。 圧倒的に多いのが国土交通省で191回。海…

『ナショナリズムの発展』E H カー(読書メモ)

海洋法の本を読んでいたらこの本が引用されていた。 国境を引いたことが書かれているという。 『ナショナリズムの発展』E H カー 大窪 愿二訳(2006年みすず書房) 国家とは何か、色々と読んできたがあまり記憶に残っていない。アンダーソンの想像の共同体く…

海洋基本計画(案)に出したパブコメと「お役人」からの回答

第3次海洋基本計画(案)に出したパブコメ。全部で195。私だ出したのは5本。全体の2.5%を占める。 「海洋基本計画(案)」に関する意見募集の結果について http://www8.cao.go.jp/ocean/policies/plan/plan03/plan03_public_kekka.html 以前は一切無視だっ…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(自分用読書メモ)その10

国際海洋法の現代的形成』の第3部海洋生物多様性と海洋保護区 第9章 国家管轄権の限界を超える海域における生物多様性保全の拡大 p. 305-335 ゴールデンウィークに読み返した(とても読み込んだとは言えない)田中則夫先生の『国際海洋法の現代的形成』の最…

島サミット・違法便宜置籍船・パラオ

Cargo ship with illegal Chinese fertilizers seized in Indonesia https://maritimebulletin.net/2018/05/05/cargo-ship-with-illegal-chinese-fertilizers-seized-in-indonesia/ 島サミット直前にパラオの旗で中国が行う違法輸送のニュースが出てしまった…

島サミット・原子力・海洋法

来週開催される第8回島サミット。 きっかけは日本のプルトニウム輸送に太平洋島嶼国が地域政府組織(太平洋諸島フォーラム)として非難決議を1992年から出してきたこと。その対策として電気事業連合会が外務省を動かしたのである。 当時外務省の外郭団体国…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(自分用読書メモ)その9

『国際海洋法の現代的形成』の第3部海洋生物多様性と海洋保護区 第8章 国際法における海洋保護区の意義 p. 247-304 この章が発表されたのは2008年。比較的最近。BBNJが大きく動き出した頃、か。 p. 247 MPAとは海洋の特定区域において人間の活動を規制しよ…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その8

「第2部深海底制度の成立と展開」の最後の章、「第7章深海底制度の設立・修正・実施」 p. 217-244 今まで深海底制度の復習的内容。目新しい、というか私が気になった箇所だけ引用しておく。 p. 219 1958年に大陸棚条約によって樹立した大陸棚制度は海洋史上…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その7

「第2部深海底制度の成立と展開」にある「第6章国連海洋法条約第11部実施協定の採択」p. 188-216 1996年に出た論文で、1995年の世界法学会で田中先生が報告された内容である。この学会のテーマは「人類の共通利益の追求」 p. 189 1982年に採択された国連海…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その6

自分用のメモで書いているのだが、読んでくださっている方が結構いて、少しは役に立っているんだなあ、と思うと勉強する気が湧いてくる。肝心の海洋生物多様性は明日にして、今日中に2、3章読み込みたい。 といっても気になった箇所を書き出しているだけな…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その5

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著 第4章 深海底の法的地位 ー 「人類の共同財産」概念の現代的意義 1978年の論文である。深海底の議論がまだ収束の方向さえ見えていない頃、ではないか? 1967年の国連総会第22会期で深海底とその資源は「人類の共同財…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その4

第2章 国連海洋法条約の成果と課題 ー 条約採択30周年の地点に立ってー 37-70ページ この章は筆者の田中則夫先生が2014年に亡くなる前年の2013年に出版された論文である。 田中先生の最新の、そして最後の海洋法論文、なのかもしれない。 この章の目的を筆…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その3

「第2部深海艇制度の成立と展開」 第5章深海底の法的地位をめぐる国際法理論の検討132−187頁 ここでは人類の共同財産を扱っているので先に読んだが、執筆時期が1986−1987年頃なので、UNCLOS第11部の実施協定以前の議論である。すなわち米国は初めとした先…

LawshipとWarship

2008年にミクロネシアの海上保安事業を立ち上げる際、ミクロネシア地域で、と笹川会長に提案したのは当方だが、「海洋安全保障」という案は羽生元会長である。 羽生さんの頭には海上保安庁があったのだ。 当時、法執行と自衛隊の違いもわからず、もしや自分…

夕暮れクルーズ「呉艦船めぐり」

初めての呉である。 こんなに大きな街だとは知らなかった。 瀬戸内海の漁村だった呉は海軍の街として全国10大都市の一つだった時代もあったのだそうだ。 京都にいる間に、瀬戸内海初め西日本をできるだけ見て回りたいと思っている。 一つは、神武東征の足跡…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その2

5センチほどの厚さがある『国際海洋法の現代的形成』 海洋法と法源論に分かれている。 この2日で読んだのが次の2章だ。 「第1部国連海洋法条約と海洋法の形成」の中の第1章国連海洋法条約に見られる海洋法思想の新展開、ー海洋思想の自由を超えてー 「第…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)

2016年1月に、笹川平和財団羽生前会長からこれからも財団の仕事を続けて欲しい、と言われて、海洋問題を体系的に学ぼうと思った。 2008年から開始したミクロネシア海洋保安事業。笹川平和財団にとっては初めての海洋事業であった。よって、事業は主に国交省…

ゴールデンウィーク勉強宣言!

博士論文の題目審査が終わり、勉強する気がまた沸いて来た。 このゴールデンウィークは、田中則夫先生の海洋法の本をじっくりと読みたい。 このブログは2010年3月に、笹川陽平会長からの指示で開設したものだが、もうじき200万アクセスになる。何よりも外務…

ロシアが正論吐いてるBBNJ

今国連で議論されているBBNJ - marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction ほとんどの日本国民は知らない議論だと思うが、私は坂元教授のアドバイスでこの件を2つ目の博論に選んでしまったので、知ることとなった。 要は、200海里…

British Influence on the Law of the Sea 1915-2015, David H Anderson(読書メモ)

Robert McCorquodale and Jean-Pierre Gauci, British Influences on International Law, 1915-2015, 7 June 2016 に収められている David H Anderson、British Influence on the Law of the Sea 1915-2015 を読んだ。 海洋法が協議されていく過程で英国が、…

UNCLOS121条島の制度の混乱を招いた島嶼国

UNCLOS121条島の制度 に太平洋島嶼国が深く関わっている。 私の一つ目の博論は情報通信がテーマで、UNCLOS121条は知らなかったのだが、太平洋島嶼国が積極的に200カイリを獲得して言った話をある資料を参照して触れていた。 その海洋の漁業資源管理のために…

フルシチョフの靴と独立付与宣言

多分合成写真 フルシチョフの靴 自決権を、太平洋島嶼国の発生と存在を語る時、避けられないのが国連決議1514号の独立付与宣言なのだ。しかし、日本の自決権研究第一人者の松井芳郎先生の下記の記述を読んだときは、エッ、と思った。 薬師寺 主要な部分は大…

Boczek博士の論文(読書メモ)

偶然ウェブ上で見つけたBoczek博士の論文 Boleslaw Adam Boczek, Ideology and the Law of the Sea: The Challenge of the New International Economic Order, 7 B.C. Int'l & Comp. L. Rev. 1 (1984), http://lawdigitalcommons.bc.edu/iclr/vol7/iss1/2 下…

UNCLOSと新国際経済秩序イデオロギー(読書メモ)

山本草二先生の海洋法の議論に出会えた事を心から感謝している。山本先生の海洋論は必須、と同志社の坂元教授から教えていただかなければ、山のようにある海洋関係の資料を当ても無く歩き回るだけであったであろう。 山本先生の海洋法の文献には「開発イデオ…

中国はどのように海洋法を理解しているのか?

中国が海洋法を独自に理解している、とよく聞く。 一体どのように理解しているのか?伊藤俊幸さんと防衛駐在官の記事があったので拾っておいた。 国際法無視の中国「海洋国土」論(上)米無人探査機「強奪」の意味--伊藤俊幸 2017年01月27日 https://www.huf…

NYTimesが親トランプ?(メガ海洋保護区否定論)

今日がたまたま誕生日の共和党の友人の転送したニュースだ。 Bigger Is Not Better for Ocean Conservation By LUIZ A. ROCHAMARCH 20, 2018 https://www.nytimes.com/2018/03/20/opinion/environment-ocean-conservation.html ニューヨークタイムズが出した…

Palauleaks ビリオネラーは大統領のお友達

笹川平和財団の羽生元会長からパラオの大統領選をフォローするように指示があった時は、「ああ、結局島の事を何もわかっていない。」とがっくりした。 選挙監視ならいいんですが、島の選挙戦のフォローは本来ならば距離を置くべき作業だ。 しかし、考えよう…

山本草二先生の国家管轄論

矢内原や新渡戸の植民論は、できれば触れたいが、そんなに今書いている博論の重要部分ではないので、どんどん読めてどんどんこのブログにメモできる。 しかし、博論関係となると筆が進まない。パソコン叩くのが進まない。思いっきり躊躇してしまう。 博論で…