やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋法

カール・ハウスホーファー勉強会

Facebookの公開グループで「カール・ハウスホーファー勉強会」も開設した。 インド太平洋構想の話からドイツの地政学者ハウスホファーに繋がった。 ハウスホファーのインド太平洋説は、ベルツなどが展開したマレイ族、即ちオーストロネシア語族の拡散植民を…

読書メモ「雑誌『改造』にみられる「地政学」の記述について」その2

前回に続いて高木彰彦教授のペーパーの読書メモ。 「雑誌『改造』にみられる「地政学」の記述について」 https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/3707/KJ00004171961.pdf 6人の地政学者が紹介されているのだが、(佐藤弘、江澤譲爾、小牧賓繁…

首相官邸から返事が来ました!

先日提出した「第8回島サミットへの提言」。首相官邸から下記の返事があった。 首相官邸HP 発信専用 ご意見等を受領し、拝見しました。 きちんと返事をくれるのだ。それだけでも嬉しい。 今までの笹川太平洋島嶼国基金として政府に提出してきた政策提言は全…

北朝鮮と太平洋島嶼国と島サミット

トランプ政権が新たに追加制裁を北朝鮮に課した。 便宜置籍船で間接的に関与している以下の国と地域。マーシャル諸島が入っている。 北朝鮮、中国、シンガポール、香港、台湾、パナマ、マーシャル諸島、タンザニア、コモロ 5月開催の島サミットでこの件を重…

読書メモ「国際信託統治の歴史的起源」

五十嵐元道著、「国際信託統治の歴史的起源 帝国から国際組織へ」がオンラインにあったので印刷して一気に読んだ。 国際信託統治の歴史的起源(一) : 帝国から国際組織へ 五十嵐,元道 http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/38375/1/59-6…

小国のパワー;地球の2%の人口が世界を動かす現実

前から気になっていた小国の数とその人口のバランス。 ウィキに一覧表があったので、試作してみたい。 ウィキデータなので、勿論正式ではないし、世銀とか探してもないので、取りあえず遊びで作ってみた。リストは国家だけでなく多くの自治領も入っている。 …

読書メモ『民族自決の意義と限界』丸山敬一著

2つ目の博論で扱いたい理論枠組みが「民族自決権」もしくは「自決権」である。 太平洋島嶼国の政治的立場を説明する時この理論、もしくはイデオロギーは必須と思いつつ一つ目の博論では何も議論できなかったからだ。 しかし、指導教官の坂元教授からは博士…

BBNJは間違った議論(殆ど言いがかり)から始まった

「国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用」(平成30(2018)年1月29日(月)、日本海洋法研究会(会長 坂元茂樹 同志社大学教授)主催)に関するシンポジウムを私の2つ目の博論指導教官坂元教授が司会されたので参加した。 会議はBBNJ…

中国が進出するフィリピンEEZの海底調査(追記あり)

中国の海底調査の海底調査に関する記事が2つ出回って議論を呼んでいたので紹介したい。 一つはフィリピンの EEZ内で中国による海底調査の結果、Philippine Rise(Benham Rise)に中国名を5つ命名し、これを国際水路機関が承認した、というニュースだ。 It’…

南極に食指を伸ばす中国(追記あり)

中国は南極にも食指を伸ばしていたのか?知らなかった。 この件は今知ったばかりで、徐々に情報収集して行きます。日本政府はわかってるのだろうか?日本語で検索してもあまり出てこないのだ。 中国の南極政策があるのだそうだ。 http://www.chinare.gov.cn/…

海洋問題とイエロージャーナリズム

「オーストラリアの貝礁、事実上すべて消滅 海洋生態系に大危機」 http://www.afpbb.com/articles/-/3162577?pid=19824330 というタイトルは多くの人の、日本の海洋生物学の権威、白山義久博士までの注目を集めた。 私は白山博士のFacebookでこのニュースを…

世界最強の水産研・取締船を作ったのは占領軍

水産庁を作ったのは米国、GHQである事を確認したく探し当てた「水産庁50年史」 水産庁自体は戦前から独立した組織を、という強い要望があったので、GHQが押し付けたようではないが、占領軍が推進する漁業改革の一環としての設立であった事が確認できた。 「…

水産省格上げを邪魔した運輸省

アメリカの政治ジャーナルから記事執筆を依頼された。今年の島サミット関連で書いてくれ、と。 あっという間に書いて編集者の送ったら、今ホワイトハウスで関連の議論をしているグループにも回覧したい、と返事が来た。 えっ! 社交辞令かもしれないが、ちょ…

河野外相が理解できて宮島大使が理解できない小国の問題(2)

日本の官僚は小国の重要性が理解できないのだ。 国交省の元審議官で、前笹川平和財団会長だった羽生次郎氏は 「早川さんよかったねえ。中国のおかげで小さな島々に笹川さんが関心を持たれて、仕事ができたじゃない。」と私に呟いた。 ああ、哀れなるかな、東…

河野外相が理解できて宮島大使が理解できない小国の問題(1)

このブログで情報を発信しているおかげで、色々なところから声をかけていただける。先日は京都大学で研究会に呼ばれて太平洋島嶼国のお話をさせていただいた。1時間の発表の後、2時間近い質問があって、色々と考えさせられた点が多い。 うまくまとめきれず満…

河野外相の外交演説とインド太平洋戦略

河野外相の外交演説にインド太平洋戦略がより明確の述べられていたので、記録だけしておきたい。 このインド太平洋戦略に昨年の議連講演会以来、太平洋島嶼国、もしくはオーストロネシア語族の視点から関わる立場となったからだ。 外交演説 http://www.taro.…

尾崎秀実の南進論

ハウスホーファーのインド太平洋構想がゾルゲや尾崎に何某かのアイデアを提供し、彼らの日本での工作活動、すなわち南進論の普及につながっているのではないか?と想像し資料を軽く検索したが見つからなかった。 ところがFBFの方からデジタルライブラリーで…

ゾルゲ・尾崎・ハウスホーファーの南進論

日本の南進論が、ゾルゲ・尾崎・ハウスホーファーの影響を受けていたのであればどのような南進論がこの3者によって展開されたのか? マレイ族、オーストロネシア語族の話は出てくるのであろうか? しかも南進論は多分新渡戸や矢内原が議論した植民政策、す…

中国の太平洋分割案ー日本はどう出る?

島サミットに関する原稿依頼があって中国の太平洋分割案のことに触れることとした。 河野外相が反論したという習近平総書記の記者会見を初めてみた。 上記ビデオの7:45 から太平洋分割論を述べている。 2008年に太平洋司令軍のキーティング司令官が同じ事を…

高坂正堯著『海洋国家日本の構想』追記あり

今年の第8回島サミットに関する記事の執筆依頼を受けて「海洋国家日本」という言葉が頭に浮かび、急に高坂正堯著『海洋国家日本の構想』が読みたくなった。 過去に何度か手に取っているが内容の記憶がない。 1964年に書かれた同論文は、マルタのパルド大使…

ウォルター・リップマンと自決権(『現代史の目撃者』から自分用メモ)

『現代史の目撃者』は読み流すつもりが傍線を引きたくなる箇所がたくさん出てきた。 著者Ronald Steel氏は南カリフォルニア大学の名誉教授。1931年生まれだから今年87歳だ。 彼が書いたリップマンの伝記によってリップマンの存在が歴史に残った、と検索中に…

ウォルター・リップマンと自決権

Facebookで誰かが、エドワード・バーネイズの『プロパガンダ教本』とウォルター・リップマン『世論』は必読とあったので、図書館で借りた。 『世論』の訳者後書きから読み始めたら、ウォルター・リップマンがウィルソンの平和の14か条をドラフトしていたと…

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。 年末は原稿執筆等々慌ただしく過ぎ、一年を振り返る余裕がありませんでした。 2017年の私にとっての大きな出来事は、同志社大学法学研究科に入学が許され、坂元茂樹教授の御指導の下、海…

南極の調査捕鯨反対国(メモだけ)

南極の調査捕鯨反対のステートメント。 Joint statement calling for Japan to end lethal research whaling in the Southern Ocean Media Release 18 December 2017 http://dfat.gov.au/news/media/Pages/joint-statement-calling-for-japan-to-end-lethal-…

インド太平洋構想と第3期海洋基本計画策定に向けた意見書

12月18日、総合海洋政策本部参与会議は、政府の今後の海洋政策の柱となる「海洋基本計画」への提言を本部長の安倍晋三首相に提出。 産経と日経がニュースにあげている。 海洋の安全保障強化を インド太平洋戦略加速へ 海洋政策本部 政治 2017/12/18 https://…

トランプ政権:遺跡保護法見直しと太平洋の海洋保護区

トランプ政権の遺跡保護法をめぐる動き。 ジンク内務省長官からトランプ大統領宛てに20ページのメモランダムが発信された。 現在200海里まで保護区にしている太平洋にある米領島嶼のことも含まれているので重要だ。これも海洋法上疑義があるはず、なのだ…

「国際環境法の基本原則」松井芳朗著、東信堂、2010(自分用のメモ)

田中則夫先生の「国際海洋法の現代的形成」を再読する前に以前読んでみたいと思った松井芳朗著「国際環境法の基本原則」を開いた。環境と国際法の関係が気になったからだ。海洋法との関連以外に、戦後の国際法の中で現れてきた自決権と天然資源の権利に関係…

パラオ大陸棚と私 - 鶏鍋からハイポリティクスへ

日本政府(外務省)主催、第4回海洋法に関する国際シンポジウムに参加したパラオ政府代表団 パラオ大陸棚の件が日本にとって重要であることを、沖ノ鳥島の件や第二列島線の件も含め、この4、5月に声をかけていただいた議連の講演会で説明した。勿論、事前…

カール・ハウスホーファーを知らないロバート・カプラン?

ロバート・D・カプラン著「地政学の逆襲 「影のCIA」が予測する覇権の世界地図」 2014にハウスホーファーの事が書かれていると言うのでその箇所だけ読んだのだが。 ヒトラーに阿った悪の地政学としか書かれていない。。 ハウスホーファーが日本に滞在したこ…

インド太平洋構想ーハウスホーファーが日本で学んだ地政学

2002年3月に受領された同志社大学文学研究科の修論「ドイツ地政学再考 : カール・ハウスホーファーを中心に / 中崎雅子」を読んだ。 修論は貸し出しもコピーも禁止なのだが、ちょうど図書館の隣が文学部。 37ページの短い論文だが読み応えは十分ある。 ハウ…