やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『後藤新平ー外交とヴィジョン』北岡伸一著 中公新書 昭和63年

『後藤新平ー外交とヴィジョン』北岡伸一著 中公新書 昭和63年 1988年の北岡先生の著書である。 後藤新平の植民論を概観するのに、貴重な資料である、と思う。 しかし、北岡先生の後藤評価は若干の疑問が残る。エビデンスが不明瞭である。 たとえば。 「後…

『世界認識』後藤新平歿八十周年記念事業実行委員会編 藤原書店、2010年

広大な後藤新平の世界を、「植民」というテーマを絞って見ていきたいと思う。 当方の関心の発端は矢内原忠雄の南洋統治論、即ち植民研究であり、これを指導した新渡戸稲造の植民論だからだ。 当然、新渡戸稲造は後藤新平の植民政策に影響を受けているハズで…

重光葵のアイランドホッピング

「以上は日米豪の関係より太平洋問題益々重視せらし、日本の南洋占領以来米国並び豪州側が日本統治区域に接近する地において特に警戒を厳にし来れる傾あり、(「グアム」日本人の取締一層厳となれるか如し)日本の南洋に関する軍事上の利用に関し益々注目せ…

The Village - エコツーリズムの結末

ミクロネシア連邦、ポナペ島にThe Villageというエコツーリズムで有名なホテルがあった。 パラオ観光局の方と話をする機会があったがこのThe Villageの話をしたらご存じない、という。で、ここに書いておきたい。 1991年には米国政府から初めてのエコツーリ…

パラオのPEW

某日本政府海洋組織関係者とのパラオでの会話。 T氏「パラオはPEWに完全にやられてますね。」 私「ここ数日のヒアリングでは、パラオの人たちはPEWの問題点を充分わかっています。」 T氏「パラオの人わかってるんですか?」 <豪州海軍も米国沿岸警備隊もPEW…

西太平洋の海洋安全保障

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ミクロネシア地域協力

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ラッセル国務次官補のアイランドホッピング

以前はキャンベル国務次官補が当方のパラオ訪問に追っかけてきたが、今回はラッセル国務次官補が、Commander of the U.S. Pacific Fleet Admiral Scott Swiftといっしょに追ってきた。 追ってきたいうのは冗談だが、2011年に行われたキャンベル国務次官補の…

『一に人 ニに人 三に人』近代日本と「後藤新平山脈」100人

『一に人 ニに人 三に人』近代日本と「後藤新平山脈」100人、 後藤新平研究会編 藤原書店 を手に取った。 後藤新平が人をイデオロギーや地位で差別せずいかに大事にしたか、ということがよくわかる。 「開発論」「教育論」につながる、内長性(Endogenous)と…

フィジー、トンガ、大型サイクロン、ウィンストンが直撃

フィジーを大型サイクロンが襲っている。 明朝、被害状況が明らかになるかもしれない。 各種、オーストラリア、ニュージーランドのニュースの外に、フィジー政府がしっかり機能しているようだ。下記のフィジー政府のtwitterが正確で迅速な情報が得られるので…

パラオ出張

明日からパラオ出張で、しばらくブログの更新ができないと思います。 現場の情報を色々集めて、また再開します。

日豪協力による太平洋島嶼国の海洋安全保障

オーストラリアの全国紙 The Australian から、先般豪州ビショップ外相来日の際、サインされた、下記の日本豪州政府の合意内容についてコメントを求められた。 「太平洋における協力のための日豪戦略」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000132640.pdf "Au…

フィジー、ロシアの軍事協力進む

先月末、(2016年1月末)ロシアから、24のコンテナー、総額$US41.8 million 相当の武器が、フィジーに到着したという。 2006年以来のフィジーの軍事政権下、豪州、NZが同国に制裁を加える中で、フィジー政府はBRICS諸国との関係を強化した。 フィジーは、…

バヌアツのレゲンバヌ議員国土大臣に復活

後列左がラルフ•レゲンバヌ国土大臣です。 バヌアツを破壊するのは大型サイクロンではなく、チャイナマネーである、と書いたブログは色々な方が取り上げてくださり、アクセスも多かった。 「小島嶼国、バヌアツを破壊するのはサイクロンではなくチャイナマネ…

日本政府太平洋の海洋安全保障にやっと動く?ビショップ外相来日(追記あり)

キャンベラの海洋安全保障政策専門家、ベルギン博士から下記のニュースが飛んできた。 Julie Bishop seals Japan deal over Pacific Islands Financial Review Feb 16 2016 http://www.afr.com/news/world/julie-bishop-seals-japan-deal-over-pacific-islan…

『歴史とは何か』EHカー著、岩波新書、1966年

沖縄旅行の鞄に入れたもう一冊は、マーガレット•マクミランの『誘惑する歴史』に比べ重い内容である。 EHカー著『歴史とは何か』 読破してまとめる力がない。 よって、「歴史にif はない」と誤用、濫用されている点だけ指摘したい。 ifで歴史を検討しなけれ…

『誘惑する歴史』マーガレット•マクミラン著えにし書房2014年

沖縄旅行の鞄に数冊の本を入れた。 その一冊がマーガレット•マクミランの『誘惑する歴史』 ベルサイユ会議を扱った"Paris 1919"の中で「民族自決」という現在の小国が誕生するきっかけともなった危うい提案をしたウィルソンをフルボッコしている。彼女の歴史…

沖縄へ ー 日本復帰その2

日本に復帰しなかった旧南洋ミクロネシア地域。 米国に留まった北マリアナ諸島。 米国との自由連合下で独立したパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島。 しかし、冷戦終結と共に米国の、特にワシントンD.C.の太平洋への関心は薄れてしまい、自由連合協定…

羽生会長と意見が一致した日

年明け、羽生会長に御挨拶をする機会をいただいた。 正直に言うと会うのが怖い。 今まで、吊るし上げにあったり、とんでものないインポシブルミッションを言い渡されたり。 例えば、 「豪州がうるさいんだよ。ちょっと行って来てよ。」 なぜ行くのか(うるさ…

沖縄へ ー 大城肇先生との出会い

八重山諸島で開催した「やしの実大学」事業のおかげで多くの方とお会いする機会に恵まれた。 その一人が、鳩間島出身の大城肇教授、現琉球大学学長である。 大城先生は、どこかで「やしの実大学」がご出身の鳩間島で開催される事を知り、一般参加者、即ち自…

沖縄へ ー 日本復帰

今回の沖縄訪問では、もし沖縄が日本に復帰していなかったらどうなったか? という事をテーマに訪ねた。と言ってもプラベート旅行であり、タクシーの運転手さんに聞いた位なのだが。 多分20人位に聞けたと思う。 一人だけ、米国か日本か半々よ、という答えで…

与那国へ ー 池間苗さんの与那国民俗資料館

一番最初に与那国を訪ねたのは1998年、1999年の「第3回やしの実大学」の準備のための事前訪問であったと思う。それから何度与那国に足を運んだであろう? 与那国行くと必ず訪ねるのが1919年生まれの池間苗さんが自宅の1階に開設した「与那国民俗資料館」で…

与那国へ ー ヨナグニウマと遊ぼう!

先週から訪ねている八重山。 そのレポートをブログに上げさせていただいているが結構な反応をいただいている。 実は今回の沖縄訪問は、プライベートな家族旅行である。 が、現地には事業でのつながりが多く、なんとなく仕事モードになっている。 与那国には…

八重山へ ー 自衛隊と海保の違い

北朝鮮のミサイルが発射される前日、八重山毎日新聞の上地義男顧問が自衛隊配備反対を明言する下記の2つの記事を書いた。 自衛隊配備で利益誘導の八重山建産連 2016年02月06日 八重山毎日新聞 http://www.y-mainichi.co.jp/news/29311/ 北朝鮮の“長距離弾道…

八重山へ — 海洋学者という活動家

上地さんの『新石垣空港物語』に、白保案が崩れた背景にサンゴ保護が浮上した事。そしてそのサンゴの重要性を指摘したのが1983年に石垣を訪ねた米国の海洋学者、キャサリン•ミュージック博士である事が書かれている。 このキャサリン•ミュージック博士は辺野…

八重山へ — 『新石垣空港物語』

久しぶりの八重山。 新しい石垣空港に初めて降り立ち、以前の空港に慣れていたため面食らってしまった。 当方にとっては旧空港が懐かしい。 「二度と来るか!」思いながら東京に戻る私を八重山毎日新聞現顧問の上地さんと友寄英正さんが待ち構えていて「俺た…

八重山へ ー 島と島を結ぶ

とんでもない時に八重山に来てしまった。 北朝鮮のミサイル発射に備えて、PCA3配置のため石垣に自衛隊が入っている様子がニュースで流れているが、今目の前でその様子を見ている。 なぜ石垣に来たのか? 私は、島と島を結ぶ、というコンセプトで沖縄の八重山…

小島嶼国、バヌアツを破壊するのはサイクロンではなくチャイナマネーだった。

昨年3月、仙台で第3回国連防災世界会議が開催され、まさにその時バヌアツに大型サイクロンが接近。会議に参加していたバヌアツ大統領が涙を流して世界に支援を頼んでいた映像を覚えている人も多いのではないだろうか。 大型サイクロン「パム」は南北に延び…

バヌアツ共和国 国家海洋政策を策定中!

バヌアツ共和国の国家海洋政策策定が進んでいるようだ。 きっかけは、国民の合意を得ずに、担当大臣が袖の下をもらって、勝手に海外の鉱山会社にバヌアツEEZの海底鉱山開発の権利を売り渡した事件である。 これに対応したのが、我らがレゲンバヌ議員。昨年東…