やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2010-01-01から1年間の記事一覧

羽生構想 ― ミクロネシア地域海上保安庁構想 ―

羽生構想 ― ミクロネシア地域海上保安庁構想 ― 2年半前、ミクロネシアの海上保安案件が開始した際、羽生会長がすぐ発想されたのがミクロネシア地域海上保安庁構想である。領海線が密接しているヨーロッパでは既にこの方法を取っているという。つまり隣国の…

舌の数

舌の数 パラオ出張中、海上保安庁から出向されている山川孝之さんとお話しする機会があった。ミクロネシア海上保安事業で、肝心の日本の海上保安庁のことを未だよく知らない。 山川さんは前日ペリリュー島に行かれたばかりで、その美しさに感動されていた。 …

クリントン国務長官豪州訪問

2010年11月6~8日いよいよクリントン国務長官が豪州を訪問した。ゲーツ国防長官も同行し、米豪の防衛協力を協議。太平洋の安全保障を強化する。 たった5年前にアーミテージがキャンベラで述べた下記のコメントがウソのようである。 「南太平洋?そんなもの…

ボーイング社のビジネスプランが失敗すると太平洋島嶼国の離島にインターネットが繋がる話

ボーイング社のビジネスプランが失敗すると太平洋島嶼国の離島にインターネットが繋がる話 2005年太平洋をカバーするAMERICOM-23 (AMC-23) という衛星が打ち上げられた。この衛星は下記の利用目的があった。 1) 太平洋にある米軍基地が使用するため。また米…

ウェリントン宣言 ー 世界一平和でクリーンな国の選択

2010年11月4日、ニュージーランドの首都ウェリントンを訪問したクリントン国務長官は、米国とNZの協力枠組み『ウェリントン宣言』を発表。 その内容は、 1.太平洋の問題について協力して対処すること。 2.大臣レベルの定期会合を開催する。 3.政治的軍事…

ミクロネシア連邦 モリ大統領来日

ミクロネシア連邦 モリ大統領来日 マリアナバラエティ 2010年11月3日 ミクロネシア連邦のモリ大統領が10月31日から1週間日本を訪問。ロバート外務大臣、ヘンリー資源開発大臣らも同行。 東京で開催される11月2日の同国の独立記念日祝典にも参加。 モリ大…

米国のアジア太平洋エンゲージメント

2010年1月に予定していたクリントン長官の太平洋訪問はハイチで地震が発生したために訪問先ハワイで延期となった。 それから10ヶ月、10月28日クリントン長官は再びハワイを訪れ、米国のアジア太平洋へ向けたエンゲージメントについてスピーチをした。 この10…

ペリリューに残された不発弾

本当に知らない事ばかりである。 手元にイギリスで登録された地雷除去活動をするNGO, “CLEARED GROUND DEMINING”のレポートがある。 日本が戦地に残して来たのはハンセン病隔離病棟の悲しい歴史や、戦跡、御遺骨だけではない。 ペリリューに米軍が投下したの…

戦争を否定することは戦死者を否定することではない。

玉砕のあったパラオ、ペリリュー島には未だ多くの戦跡と御遺骨が残っている。日本軍戦死者は約1万人。米軍戦死者は約2千人。 翌々週予定しているパラオ出張の同時期に、今年5月に収集しDNA鑑定の結果、日本人のものと分かった御遺骨がパラオ政府から日本政…

南洋庁におけるハンセン病患者隔離政策

知らない事ばかりだ。 日本委任統治時代、南洋庁は島のハンセン病患者を隔離するため、下記の療養所を設置した。 1926(大正15)年 サイパン島 1927(昭和2)年 ヤルート島 1931(昭和6)年 パラオ島 1932(昭和7)年 ヤップ島 厚生省「官公立癩療養所長会議議案」19…

日米安保の先を示すミクロネシア海上保安案件

渡辺昭夫著「冷戦の終結と日米安保の再定義 ― 沖縄問題を含めて」を読んで 東京大学名誉教授渡辺昭夫先生は笹川太平洋島嶼国基金2代目運営委員長である。 初代の笹川陽平運営委員長の10年が組織立ち上げの試行錯誤の時代であれば、2代目渡辺運営委員長の10…

パラオ大統領全EEZを海洋哺乳類サンクチュアリーに

パラオ大統領全EEZを海洋哺乳類サンクチュアリーに 2010年10月25日 マリアナバラエティ 名古屋で開催されたCOP10のオーシャン・デーにおいて、パラオの環境・自然資源・観光ハリー・フリッツ大臣が、600,000km2に及ぶ同国の全EEZをトリビオン大統領が海洋哺…

Asia Pacific Civil-Military Centre of Excellence

<人助け集団か人殺し集団か?> 防衛大学入学希望者の入学理由で圧倒的に多いのが「人を助ける仕事がしたい」ということだそうである。同大学福嶋輝彦教授から伺った話だ。 確かに自然災害や国際的平和構築分野での自衛隊の役割は、議論もあるが、目覚まし…

一千七百万円の助成金が百七十億円の補助金に

一千七百万円の助成金が百七十億円の補助金に 笹川太平洋島嶼国基金は1998年から2000年の3年間、ハワイ大学が実施する「遠隔教育推進のための情報通信技術・応用訓練」に17,425,785円の助成を実施した。 この助成事業により、サイパン、グアム、米領サモア…

ICT4D ー 新カテゴリ

ICT4Dのカテゴリーを設けることにした。 開発のための情報通信技術。英語では Information and Communication Technology for Development という。 略して"ICT4D"。 4をforと読ませる。 1991年、笹川平和財団に入ってUSPNetやPEACESATの事業を立ち上げた。 …

After Pacific Patrol Boat Program

For the last 30 years the Australian government has been working on the “Pacific Patrol Boat Program”at a cost of almost 2 billion dollars. This program is the only scheme covering the Pacific sea surveillance activity so far. However, as …

寺島紘士常務の中国の海洋戦略に関するブログ

海洋安全保障の新秩序構築を目指した研究会を発足するにあたって「中国」の存在をどのように扱うかがある意味で隠されたアジェンダ、である。 脅威という人もあれば、今はまだ脅威ではない、とい人もいる。 Engage せよ、という人もあれば距離を置けという人…

一の行動から百の議論へ

この10月、海洋安全保障の新秩序に関する研究会を発足させた。 座長に猪口孝教授、委員には海洋政策財団の寺島常務、前内閣官房総合海洋政策本部事務局長の井手憲文氏、早稲田大学の河野真理子教授、前アジア太平洋安全保障研究センター研究員(ホノルル)で…

白川の藻と生物多様性条約会議

6月には数千の蛍が飛び交っていた、京都の白川が緑色に染まっている。 川藻が生えたのだ。縄のれんのような長い長い、緑の藻。 青鷺が一羽、置物のようにじっと川の流れにたたずむ。 獲物の魚を狙っている。 青鷺が魚を捕るのを目撃すると美しい、というよ…

嵯峨とベトナムを結ぶ - 角倉了以

嵯峨とベトナムを結ぶ - 角倉了以 京都の町に高瀬川や白川がなかったらどんなにつまらない景色だろう、と思う。 豊臣から徳川への動乱の時、京都嵯峨に角倉了以なる人物がいた。 祖父は企業家、父は医者という家系。 朱印船によるベトナムとの貿易で巨万の富…

太平洋地域の海洋安全保障の新秩序 ― Regional Maritime Coordination Center(2)

<始まりはBateman/Berginペーパー> Special Report Issue 12 - Australia and the South Pacific: Rising to the challenge、14 MARCH 2008, By Anthony Bergin, Graeme Dobell, Stewart Firth, Satish Chand, Andrew Goldsmith, Bob Lowry, Bob Breen, Sa…

再体験

再体験 こどもができて嬉しいこと、楽しいことがいっぱいある。 その一つが、自分のこども時代を再体験できることだ。 人生2倍楽しめたような気分だ。 こどもの時は早く大人になりたい、と考えていた。 でも大人になると、こどものころの方が幸せだったよう…

道草

こどもができて嬉しいこと、楽しいことがいっぱいある。 一つが再び道草をするようになったことだ。 道に落ちているドングリを拾ったり、猫を追いかけたり、海を眺めるため立ち止まったり、目的地になかなか辿り着かない。 いつから道草をしなくなったのだろ…

クリントン国務長官フィジーとの対話を希望

2010年9月29日、ニューヨーク国連本部でクリントン国務長官とフィジーのイノケ外務大臣が会談。 イノケ外相はUSAID事務所がフィジーに再開したことを歓迎すると共に米国が人身売買や知的所有権の問題に高い関心を示していることを評価した。クリントン長官…

太平洋地域の海洋安全保障の新秩序 ― Regional Maritime Coordination Center(1)

太平洋地域の海洋安全保障の新秩序 ― Regional Maritime Coordination Center(1) 日本財団、笹川平和財団が進めるミクロネシアの海上保安案件の重要なテーマがRegional Maritime Coordination Center(RMCC)である。 現在RMCCについてはmaritime securit…

一件落着

誰も読んでいないのでは?と思っていたこのブログも、ちゃんと読んでいただいていることがわかったので、きちんとご報告しておきたい、と思う。 日本財団と笹川平和財団が進めるミクロネシア海上保安案件、ある国が離脱するかもしれないというメールが来たこ…

パラオの鯨 鯨のパラオ

パラオの鯨 鯨のパラオ 長年捕鯨問題では日本支持を表明し、日本にとって頼もしい国パラオが、今年になって不支持に回る、と言い出し、大騒ぎになった。 鯨だけではない、サメも保護、観光客からグリーンフィーなる環境税も取り立て、パラオは一躍環境保護の…

海洋安全保障の新秩序構築研究会 ― 軍事と非軍事の境界

私が提案し笹川平和財団として新たに立ち上げようとしている「海洋安全保障の新秩序構築研究会」は主に非軍事的手段による新秩序を模索する。 なぜか? 1.冷戦終結後安全保障が多様化した。例えば、主体が国家から国家以外の犯罪組織などに。非対称脅威、非…

アンフェアトレード

アンフェアトレード 今月、マーシャル諸島と日本の漁業交渉が決裂し、ニュースになった。 マーシャル諸島EEZで捕獲できるマグロの末端価格は年間約100億円。マーシャル諸島政府に入る漁業権は2億円。 額が大きいと実感が湧かない。桁を落とそう。2円で売っ…

大洋州課職員X

笹川太平洋島嶼国基金を再興させた私は外務省と比較的コミュケーションを密にとってきた。大きく動いたのは故小渕首相から笹川陽平会長に太平洋島サミット開催へ向けた協力依頼があった2000年である。当時の大洋州課宮島課長から連絡があり公式にコラボを展…