やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『インドから考える』アマルティア・セン、山形浩生訳 NTT出版

ソーシャルメディアでつぶやいたりすると、多くの反応がもらえる。 ポジティブな反応とネガティブな反応があるが、今のところポジティブな反応の方が断然多い。 情報が広がり、時には意見交換までできる。 ツイッターでアマルティア・センの事をつぶやいたら…

中国からの学生さん

アマルティア・センの学会で中国から来た女子大生(修士課程と博士課程)と仲良くなった。 娘のような年齢である。 初めての日本だという。 「日本人はポライトですね。」 と言われて嬉しかった。やっぱり中国人観光客は日中関係を改善するかも?歓迎すべき…

ヤップは大丈夫じゃない!

2012年に谷口智彦さんがWedgeに書かれたので知っている方もいると思うが、中国は第二列島線上にあるヤップ島(ミクロネシア連邦)に手を伸ばしていた。 参考 尖閣諸島とヤップ - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa 中国企業の攻勢に島の指導者が絡めとられ…

パラオ大統領選公開討論会

9月末の大統領予備選挙へむけた4候補の公開討論会が8月17日パラオで開催された。主催したのはパラオメディア協会とパラオ短期大学である。 メディアと高等教育機関が積極的に選挙の公正さを促進した事自体、大きな事件であろう。 始めての試みではないか…

ハイエンドの観光を目指してーパラオシェラトンオープン

Sheraton Hotels & Resorts to debut in Palau August 19, 2016 の記事 http://australia.etbtravelnews.com/297672/sheraton-hotels-resorts-to-debut-in-palau/ より 日本語のニュースはこちら 2019年3月、『シェラトン パラオリゾート』を開業 ~パラオ共…

パラオの大統領選を牛耳るPEWと中国

パラオの大統領選、レメンゲサウ大統領が難しい立場に追い込まれていると言う。 追い込んでいるのはベルズ副大統領だけではない。 プロパガンダ環境NGOのPEWや大量の観光客を送り出している中国業者だ。 どういう構図か? まずはPEW。海洋保護区を実施するた…

パラオ大統領選ーベルズ副大統領兼法務大臣の決意

9月末に予選を迎えるパラオ大統領選。 先日4人の候補による討論会が行われたがパラオ語しかない。英語はないというので、パラオの知人が送ってくれたベルズ副大統領の出馬決意表明の新聞記事を御紹介したい。 1。法の支配 2。透明性 3。正直 4。価値あ…

『歴史と私』伊藤隆著 中公新書 2015年

以前から気になっていた伊藤隆著『歴史と私』を読んだ。 「今でも、あれは夢じゃないかと思います。」 で始まり、 「そして、やはり思うのです。あれは夢はないか、と。」 で終わる「まえがき」を読んで一気にこの本に引き込まれてしまった。 今上天皇は伊藤…

福田恆存と高坂正堯 ー 「高坂正堯の憲法観」森田吉彦

福田恆存の「當用憲法論」 で高坂先生が護憲論者である事を始めて知った。 ホンマかいな、とウェッブサーチしたら今年のVoice7月号に「高坂正堯の憲法観」(森田吉彦)が掲載されているのを見つけた。 福田恆存の本を図書館へ返却した際、立ち読みで読んだ…

福田恆存の象徴天皇論(4)「當用憲法論」

福田恆存の文章は秋の夜長の頭も空気も澄み渡った時に読むべきだ。 猛暑で、しかも太平洋横断後の茹だりきったヘナヘナな状態で読むべきではない! とは言うものの、福田恆存に出会えた事は、新渡戸の「象徴天皇論」の議論を知る、世界で多分唯一人の当方に…

福田恆存の象徴天皇論(3)「象徴天皇の宿命」

福田は皇太子ご成婚の時に書いた「象徴を論ず」を下敷きに、平成元年「象徴天皇の宿命」を「文藝春秋特別号 大いなる昭和」(3月号)に寄稿している。 こちらは昭和34年に書かれた前作に比べ、悲痛の叫びが聞こえる。 それは私が先般行われた天皇のビデオメ…

福田恆存の象徴天皇論(2)「象徴を論ず」

『福田恆存評論集 第五巻』(文芸春秋、昭和62年)に納められている「象徴を論ず」は、「文藝春秋」昭和34年5月号に掲載された。 皇太子殿下(現今上天皇)のご成婚を巡る、松下圭一氏の「大衆天皇論」を執拗に批判する形で、福田の象徴天皇論が語られて…

福田恆存の象徴天皇論(1)

新渡戸稲造の「象徴天皇論」をこのブログに書いていたら、Facebookのお友達(これをFBFと言うらしい)から福田恆存が象徴天皇について語っている事を教えていただいた。 福田恆存? 全く存じ上げなかった。 wikiには「評論家、翻訳家、劇作家、演出家」とあ…

パラオ麻薬取締官が手を染める麻薬犯罪

これもパラオ大統領選と関連しているのだろうか? パラオの麻薬取締。一時取り締まり強化のニュースが出ていたが最近は見なかった。 8月14日の下記のニュースでは、麻薬取締官自身が麻薬に手を出し、しかも摘発した事件のもみ消しをしていた容疑で逮捕され…

ペリリュー島の慰霊祭

パシフィックパートナーズでパラオを訪ねている海上自衛隊がペリリュー島で慰霊祭を行った模様。 模様、と書くのはニュースには見つけられず。下記の海上自衛隊のFacebookしか見当たらないからだ。そこには写真はあるが詳細はない。 それにしても、70年も経…

中尾ADB総裁のパラオ訪問(追記あり)

<中尾ADB総裁のパラオへのコミットメント> パラオ訪問中の中尾ADB総裁が昨日パラオ議会で演説。水道、衛生、ICT支援を基盤とした観光開発と公共サービスの改善を強調した。 中尾総裁はパラオが2015年には9%強の経済成長率を記録したが、2016年には3%であ…

「島々」ー 天皇陛下のおことば

「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」 誰も取り上げていないようだから書こう。 おことばのなかに 「日本の各地,とりわけ遠隔の地や島々への旅も,私は天皇の象徴的行為として,大切なものと感じて来ました。」 がある。 「島々」 もうこの…

ADB中尾総裁パラオ訪問中

パラオを訪問しているのは海上自衛隊「しもきた」だけではなかった。ADB アジア開発銀行中尾武彦総裁が昨日8月10日から12日まで訪問。 ADBが太平洋島嶼国支援に本格的姿勢を示したのはここ数年である。特にそのインフラ支援を急ピッチで進めている。パラオ…

パラオに海上自衛隊「しもきた」が寄港中

パラオ沖に停泊中の海上自衛隊輸送艦「しもきた」 パシフィック・パートナーシップ2016に参加している海上自衛隊の輸送艦「しもきた」がパラオを訪問中である。 期間は7月29日から8月15日と2週間強。 詳細は下記の防衛省ウェッブにあるが、民間の…

"The Man Without a Plan" (2006 アマルティア・セン)

左からゲイツ、イースタリー、セン、サックス アマルティア・センのブログはどの項目に書くか迷ったが、開発学が新渡戸、矢内原にも通じるのと何よりも、この3名はアダム・スミスを基盤に論を展開しているので、ここに書くことにした。 ジェフリー・サック…

張り子の猫が水泳で応戦?!

パラオ大統領選に神経が集中し(且つすり減らし)オーストラリアの件が気になっているがなかなか書けないままだ。 特に今年初旬に出された防衛白書。日本ではほとんど議論されていないのではないだろうか? 豪州の防衛と言えば、防衛大学の福嶋輝彦教授だが…

蔡政権下在パラオ台湾の大使着任

Michael Y.K Tseng大使 こちらにCVがあります。 http://www.mofa.gov.tw/en/MofaLeader_Content.aspx?n=8C1B5DF8A167A082&sms=83A9AD4277955F24&s=CF5DF99964D9DB8E 台湾が蔡政権となって、台湾と外交関係を一貫して保持するパラオの台湾大使が昨日着任。 そ…

明治維新前後の日本の人口

今日は天皇陛下のお言葉がある日であった。 天皇制とは何か、フランス社会学者ブルトミーが英国王室を形容した「象徴」とい言葉を『武士道』の中で引用し、再び『日本-その問題と発展の諸局面』の中に引用、議論した新渡戸の著書を追ってきたので、お言葉の…

パリ講和会議の記録

アントニオ先生が引用したウィルソンの自戒の言葉(「民族自決なんて言わなきゃよかったよ。どんなに後悔しいているかわかるまい。」意訳です。)の出典を調べていたら、1920年に出版された"A history of the Peace Conference of Paris"をみつけした。 しか…

台湾からのサイバー攻撃?

台湾の対太平洋島嶼国政策、及び太平洋島嶼国との共通点である台湾原住民対策についてFacebookでフォローしていたところ、Facebook事務局から台湾からのハッキングの可能性がありブロックしました。パスワードを変更して下さい、との案内が来た。 当方、台湾…

米国史上最大級の資産差し押さえ事件とディカプリオ、そしてパラオの海洋保護区

Department of Justice announces guilty plea in 1MDB case ディカプリオの映画がマネロンと関係している記事をちらっと読んで気にはなっていた。先ほど下記の記事を見つけてショックを受けている。 「マレーシア政府の腐敗ぶりにディカプリオも真っ青 1MDB…

アマルティア・セン 持続可能ーその方法と目的

Sustainability 「持続可能な開発」が花盛りである。 しかし、このSustainabilityと開発についてどれだけ質的に議論されているのか疑問だ。 アマルティア・センの論考をたまたま見つけた。 "The Ends and Means of Sustainability" Journal of Human Develop…

日本の台湾研究者が知らないオーストロネシア語族、そして後藤・新渡戸

このブログのおかげで広く知識や情報を共有させていただく結果となった。 その中でも、台湾との繋がりが最近出て来た。 特に台湾原住民の事である。 台湾の蔡政権が国内の原住民(オーストロネシア語族)に重点を置いている事と、 そのオーストロネシア語族…

保守が知らない、語らない「樋口レポート」

安保法案が議論される中、当然渡辺昭夫東大名誉教授が実質執筆された、戦後初の日本の安全保障政策「樋口レポート」は取り上げられているものだと思った。 ところが保守を代表する論壇の編集長はその存在すら知らなかった。 安倍政権に近いのであろう細谷雄…

神武東征の足跡を辿る旅 ー 計画中!

旅にはテーマがあった方がいい。 寅さんのような風が吹くまま、とういうのもいいけれど。。 新渡戸の著書『日本-その問題と発展の諸局面』に出会えた事で天皇制について深く知る事となった。今までは小室直樹の天皇制に関する著書しか読んでいなかった。 新…