やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ニウエの海洋保護区とパナマ文書(追記あり)

禁漁区を制定した新たなメガ海洋保護区が太平洋に誕生するようだ。 場所はニエウ。人口1,600人でニュージーランドと自由連合協定を締結する。 ニウエ政府は40%のEEZを禁漁( No Take Zone)と海底資源開発も禁止とする海洋保護区制定に動く、という。 同じ…

鴨川に響くモーツアルトのレクイエム

鴨川沿いの道を選んで同志社大学まで徒歩で通っている。 6月の日差しが厳しくなってきた頃、信号待ちで日陰に入った。 老舗のお米屋さんの前。 モーツアルトのレクイエムを一緒に歌いませんか?というポスターが貼ってあった。 モーツアルトのレクイエム。音…

開発イデオロギーと自決権・脱植民

指導教官の坂元教授からは博士の3年で扱える問題ではないので止めておけとアドバイスいただいている件なのだが、人口数万、数十万で独立、主権国家となった太平洋島嶼国を支える根拠である国際法の「自決権」。どうも気になってダメ元で勉強してみようと夏休…

米国の遺跡保護法ー111年目の改正か?

上記の連邦政府専門委員会のビデオは実質40分程度で見ていて面白かった!この後full houseに,そして senateに送られるらしいが、環境保護派とメディアを背後に抱える民主党の議事妨害は容易に想像がつく。 4月26日に大統領令としてサインされたAntiquties A…

フィジーと中国の闇の奥

2ヶ月前、中国の警察がフィジーに来て、77人のインターネット犯罪者を連れて帰った件。 ABCニュースが新たな事実を取材。 連れ去られた中国人の多くが10代の女性だったとの証言。組織的セックスワーカー犯罪の可能性が。 現地のジャーナリストや知人たちの…

『オレンジ計画』エドワード ミラー 著

『オレンジ計画―アメリカの対日侵攻50年戦略』 1994 エドワード ミラー (著), 沢田 博 (翻訳)、新潮社 オレンジ計画ーレインボー計画の中の対日戦略である。 太平洋を、日米関係を、第二次世界大戦を知る重要な資料だろうち思いつつ、戦記物は関心が湧かない…

安保理北朝鮮制裁リスト9隻の内パラオ船籍は3隻

「北朝鮮籍の船舶など4隻を制裁対象に追加 国連安保理」 10/10 2017 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00372957.html 上記の記事によると「国連安保理は、北朝鮮に対する制裁決議で禁止されている物品を運んでいたとして、5日付で、北朝…

使われない船?

自分が立ち上げた事業が継続し、発展する姿を見るのは嬉しい。 しかし、良いニュースばかりではない。 パラオに既に供与した小型船が港に停留したままで使われていないのが心配だ、とパラオの閣僚始め数人から囁かれ、息が止まった。 下記のパラオ大統領府の…

Our Oceanと海底資源開発をめぐる議論

The Prince of Wales addresses Our Ocean Conference about climate change and marine pollution 5th October 2017 https://www.princeofwales.gov.uk/news-and-diary/the-prince-of-wales-addresses-our-ocean-conference-about-climate-change-and-marin…

仏領ポリネシアのハオ環礁を巡る「虹の戦士号事件」「国家責任」「1500億円の養殖場」

まさか、まさか、仏領ポリネシアのハオ環礁の事が2日続けて当方の指導教官の坂元教授、そして水産庁のドン宮原さんから伺うとは思わなかった。誰も知らないし、話しても誰も関心を持たないであろう、と思っていた環礁である。 坂元教授のunder graduateの授…

Dr Berginの提案パラオで叶う(2)

RMCCを提案した豪州のDr Anthony Bergin. 完成間近のパラオのセンターは彼の提案である。 <無知な有識者たち> ミクロネシア地域で何か事業を始めるのであれば「パラオ」と言うのは現地を知る人の常識なのだ。しかし、外交上そんな事は口に出して言えないし…

Dr Berginの提案パラオで叶う(1)

RMCCを提案した豪州のDr Anthony Bergin. 完成間近のパラオのセンターは元々は彼の提案である。 自分で立ち上げた事業が継続し、発展していく姿を見るのは感慨深い。自分の子供の成長を見るようだ。 ミクロネシア海上保安事業の他にも、博論にも取り上げた南…

国際法と国内法の関係(長尾龍一未完論文)

国際法というと、あのお経のような条文しか思い浮かばず、一生縁がないと思っていた。 正直な話、同志社に入ったのは国際法を、というより2008年から笹川平和財団で担当してきた海洋問題を体系的に学びたいとの思いで、思い切って高名な坂元茂樹教授の門を叩…

カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞と海洋物理学者の父

カズオ・イシグロ氏、知らない作家だった。 SNSを追っていると彼の父親が高名な海洋物理学者である、という記述があって、リンクを辿ってみた。「海」ということなのでここに書いておこうと思う。 イシグロ・カズオ氏の父、石黒鎮雄博士は海洋物理学者だった…

太平洋のレジェンド、篠遠喜彦博士の訃報

昨日、このブログを書き終えた時、ハワイのビショップ博物館篠遠喜彦博士の訃報が届いた。 篠遠喜彦博士の思い出が走馬灯にように巡って、昨日は、多分今日も、物事が手につかないであろう。 笹川太平洋島嶼国基金は、少なくとも私が関わった1991年4月からの…

友好関係原則宣言(自分用メモ)

国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言 Declaration on Principles of International Law concerning Friendly Relations and Co-operation among States in accordance with the Charter of the United Nations …

パラオ国旗が赤く染まる日は来るのか?

パラオに住んでいる人よりパラオに詳しい、とパラオに住んでいる方から言われて、色々と質問をいただく事がある。 中国に寝返ったパナマ。次はどこか?パラオかバチカンか? ちょうどパラオ滞在中に国会議長とPresident of Senatorsが中国に招待され、パラオ…

パラオを防衛するのは米軍?台湾軍?

現場に行くと、やはり面白い情報が得られる。 もしかして知らないのは私だけ?かもしれないが。。。 パラオ共和国国会議員の友人とのブランチ。いつも2時間、3時間がすぐに過ぎてしまう。 安全保障の話なった。 国会議員「パラオに北朝鮮のミサイルが飛ん…

Self-determinable Development of Small Islands

昨年、Springerからデジタル書籍で出版された下記の本が、ハードコピーで出版されました。私は、ICT4D, 情報通信政策と開発について一つ目の博論から1章書かせていただきました。 本来ならばお世話になった先生方に献呈すべきところですが、一冊140£!約…

『プロパガンダ教本』エドワード・バーネイズ著

『プロパガンダ教本』エドワード・バーネイズ著。中田安彦訳。 成甲書房。(2010年) 前から気になっていた本である。 なーんだ、という感想と共に、アメリカはすごい、とも思った。 まずはこの本、訳者前書きと後書きを先に読むべき。 広告屋のバーネイズが、…

海外まき網漁業と資源管理(一社)海外まき網漁業協会会長◆中前 明

【Ocean Newsletter】第411号(2017.09.20 発行) 海外まき網漁業と資源管理(一社)海外まき網漁業協会会長◆中前 明 https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/latest/index.html 当方の指導教官の坂元教授が編集委員をされるようになっ…

パラオの漁港

パラオの漁港。 黒い煙を吐く漁船がひしめき合っている。 一体、どれだけの船が違法漁船で、どれだけが便宜置籍船で、そしてどれだけの漁船がきちんと漁獲量を申告しているのか?もしくは政府機関が管理しているのか? 水産資源管理は法遵守からはほど遠い途…

中国の庭と化す太平洋の要衝・サイパン

中国の庭と化す太平洋の要衝・サイパン 児玉 博 (ジャーナリスト) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10626?layout=b 赤く塗り替えられる太平洋の島・パラオ 児玉 博 (ジャーナリスト) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10327 ウェッジという雑誌に…

What is Australia up to?

英国、チャタムハウスの知り合いから興味深い記事が送られて来た。 今日読む予定の資料が色々あるのだが先にこちらを。 最近の中国を、そして太平洋島嶼国をめぐるオーストラリアの動きが簡潔にまとめられ、この問題をフォローしていない人には貴重な記事、…

「インテリジェンスの20世紀 情報史から見た国際政治」中西輝政・小谷賢著

これも『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(江崎道朗著、PHP, 2017)か、関連の江崎氏のコメントで取り上げられていた書籍である。 『インテリジェンスの20世紀 情報史から見た国際政治』(中西輝政・小谷賢著、2007年、千倉書房)。 雑誌Will11月号の、中西…

祖母が受けた大正自由教育

wikiから 手塚岸衛先生 『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(江崎道朗著、PHP, 2017)に大正の自由教育の事が出てくる。 今の自分を形成している重要な要素がこの大正自由教育である。反応せずにはいられない。 私の祖母は、自由教育の第一人者、手塚岸衛先…

パラオ海洋保護区が年金破綻対策??

クリックすると拡大します。 EEZの80%を商業漁業禁止するパラオ海洋保護区の目玉はなんといってもその資金システムにある。 基金を創設するのだ。 その収入は主に観光客から。 すなわち現在出国時に払う50ドルが100ドルに値上げされる。 しかし、増額する50…

パラオの中国

小島嶼国パラオに中国からの直行便が飛ぶようになって、あっという間に中国の影響下に置かれてしまったのは、確か天皇皇后両陛下が尋ねられる前年からだったと記憶する。 町で、また古い友人たちから聞いた情報である。 <危険な農薬> (コメントをいただき…

終戦後のパラオを救ったのは日本の缶詰?

現場でしか得られない情報が多々ある。 パラオの官僚との会話の中で、クジラの話が出てきた。 「米国が終戦後信託統治となったミクロネシアに何もしてこなかった事は知っているよね。」 「はい、ケネディ政権まで放って置かれたんですよね。」 「食べるもの…

ナカムラ元大統領との会談(3)APPU

パラオ訪問。他にも盛りだくさんの情報があり、忘れる前に書いておきたい。 ナカムラ元大統領との2時間近い会談でギリギリ公表できる内容の最後の話題。ナカムラ大統領の後継者となったご子息のアリックさんの事だ。 確かナカムラ元大統領のご兄弟か、親戚…