やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

後藤新平の博士論文は36頁

岡山大学姜克實教授の後藤新平の論文に興味深い事が書いてあった。 1890年、ドイツに留学した後藤は3ヶ月で博士号を取得する。博士論文はドイツ語で36頁! 論文名は「衛生行政と公衆衛生ー日本と他国の比較視点」 そしてその後藤のドイツ語の力を育てのが…

第2弾! 速報! 日本・太平洋島嶼国友好議員連盟要望申入れ(追記あり)

島嶼議連、山際議員のFBに引き続き古屋議員のFBにも昨日の、麻生財務大臣、岸田外務大臣への申し入れが報告されていた。 「海洋安全保障」が入っている! もしかしたら外務省が外したのではないだろうか?と不安に思っていた。 だって国家レベルで海洋安全保…

『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』江崎道朗著

評論家江崎道朗氏の『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』が昨年出版されてから1年近くが経つ。弁解になるが、既に数百冊の本を棄て、もう本は買わない、図書館にあるのは借りて、ないのだけ買う、というポリシーを自分で決めている。 『アメリカ側から…

速報!日本・太平洋島嶼国友好議員連盟要望申入れ

朝からアドレナリン全開です。 島嶼議連の山際大志郎議員のFBによると、昨日麻生財務大臣、岸外務大臣に「第8回太平洋・島サミット」における太平洋島嶼国への支援策の強化に関する要望の申入れが昨日行われたとのこと! 結果はいかに?

後藤新平の国家衛生思想

はやり、1冊分のホロコースト関連資料を読むのは精神的に良くないような気がする。 以前ハンナ・アーレントの映画を観た後も、しばらく重い気持ちが続いていた。 ナチスの「人種衛生学」という文字を見て気になったのが後藤新平の「国家衛生思想」。 後藤の…

『ナチスと動物』ボリア・サックス著

『ナチスと動物』ボリア・サックス著、関口篤訳、2002年、青土社 やはりホロコーストを扱った文書を、特に1冊本を読むのは精神的に辛い。 どうまとめたらいいのか? 写すのも気が重い。。 長崎大学の保坂稔教授の『緑の党政権の誕生―保守的な地域における環…

八田與一の銅像と許文龍

坂元茂樹教授の講演を聴きに東京に出たところ、後藤、新渡戸に続き台湾を開拓した八田與一の講演会があると言うので足を伸ばした。 お孫さんの八田修一さんによる講演であった。 銅像の首が切られた後、随分早く修復できたのだなと思っていたら以前このブロ…

対立概念:EEZと人類共同財産

ここ数ヶ月、海洋法関連の資料を沢山読んでいて、一部ブログに書いているが書かない文書も多くの線を引いている。 国連海洋会議の議論を読んでいて、EEZと人類共同財産の対立概念を誰が書いていたっけ?と探したらあった。柳井俊二氏の下記のペーパーである…

『ヤルタとポツダムと私』長尾龍一著

『カール・シュミットの死』という長尾龍一教授の本を手に取ったところ、表題のテーマは沢山ある小論やエッセイの一つで、長尾教授と満州の関係を知る『ヤルタとポツダムと私』エッセイも収録されていた。 後藤新平が開発した満州の最後にいた、日本人の一人…

王様がパスポートを売り、大統領が麻薬を売る(1)

島嶼議連の勉強会。貴重な経験であった。 当然、島嶼国の怪しい活動に関する詳細は、外務省現地公館から、もしくは国際金融犯罪に詳しいであろう財務省が把握し、議員にも上がっていると想像していたが、そうではなかった。 「王様がパスポートを売り、大統…

国連海洋会議(3)Our Ocean, Our Future(追記あり)

あまり期待していなかったが国連海洋会議の「成果文書」 面白い。 多分国際海洋法に精通したマトモな人が関与している。 メガ海洋保護区もないし、マグロが絶滅するとも書いていない。 よかった! まずは、パラオやキリバスの大統領と、一部日本のNGOや米国…

国連海洋会議(2)「違法な」Our Ocean, Our Future

Our Ocean, Our Future: Call for Actionと題した、SDG14の実施促進に向けた具体的な行動を列挙した成果文書。これに入る前に、パラオとバヌアツがパリMOUのブラックリストは入ったと、パラオのFBで騒いでいるのでこちらを書きたい。 まさに「違法な」Our Oc…

後藤新平の植民政策(7)対清政策

藤原書店が2005年に出した「正伝・後藤新平」4巻は満鉄総裁時代を扱っている。 「厳島夜話」の前に「対清政策」(p. 402-486) があって、これも読んでしまった。読んだと言っても当時の歴史的背景やあそこら辺の地域の事を何も知らないので、とても正しく理…

後藤新平の植民政策(6)「厳島夜話」後半

厳島夜話の舞台となった広島の岩惣 伊藤に新旧大陸対峙論を披露した後、後藤は感想を書いている。 この新旧大陸対峙論は、後藤が児玉との最後の会談に述べた内容であった。児玉は翌朝死去する。よって後藤は児玉から4時間に渡って説得されたが躊躇していた…

後藤新平の植民政策(5)「厳島夜話」

いよいよ「厳島夜話」である。現代語に編集して下さった藤原書店さんには本当に感謝したい。スラスラ読めるだけで大分違う。 「厳島夜話」(p. 487-526)は、1.伊藤博文に大アジア主義を説く 2.新旧大陸対峙論の提唱、3.伊藤の快諾、 4.藤・桂両公の遺…

国連海洋会議(1)森国際協力局審議官のスピーチ

6月5−9日に開催された国連海洋会議。正式には「持続可能な開発目標(SDG)14実施支援国連会議」についてまとめたい。 まずは下記の外務省のウェッブが簡潔のまとめているので、それを見て行く。 持続可能な開発目標(SDG)14実施支援国連会議 平成29年6月…

"The Right Man" バヌアツBaldwin Lonsdale大統領の訃報

The Right Man By Dan McGarry http://dailypost.vu/news/the-right-man/article_88fa757e-d434-5edc-9b6c-4bfab1547e81.html バヌアツ共和国のBaldwin Lonsdale大統領は2015年3月の第3回国連防災世界会議に参加し、会議中に大型のサイクロンがバヌアツを襲…

後藤新平の植民政策(4)満州植民

小島嶼国の誕生の背景に英国のコモンウェルスがある。これを発想したのはチャタムハウスを創設したライオネル・カーティスで、彼は後藤新平にも新渡戸稲造にも会っている事を知って、放っておいた後藤新平の植民政策を再度確認したいと思い、本を手にした。 …

村上水軍:日本のシーパワー

「広大な太平洋を守るのに日本の力が必要だ。」 こう、パラオの大統領補佐官(2008年当時)に語ったのはPACOMのキーティング司令官だ。 私は、ミクロネシア海上保安事業を立ち上げる作業中に旧知のクアルテイ閣下から直接お伺いした。 先般の議連講演会でも…

「アジアの未来」 は7つのルール:安倍内閣総理大臣スピーチ

6月5日の第23回国際交流会議での安倍総理のスピーチが中国の「一帯一路」を支持した内容、とニュースで知って、その原文も読まずに、そうなのか、どうしてだろう?と思っていた。 昨夜、議連の勉強会で御挨拶をさせていただく機会を得た、外務省の四方参…

太平洋島嶼国と気候変動

「アメリカ「パリ協定」離脱でも、地球の気候には全く影響なかった」 川口 マーン 惠美 2017.6.16 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52024 この記事を見かけて気になっていた。 気候変動と米国の離脱は関係ない? もしかして気候変動は人為ではない? も…

トンガ首相 ニュージーランド首相に謝罪

Calls grow in Tonga for probe into seasonal workers' behaviour in NZ https://www.tvnz.co.nz/one-news/world/calls-grow-in-tonga-probe-into-seasonal-workers-behaviour-nz もう10年位になるであろうか? 島嶼国の経済開発政策の一つとしてSeasonal w…

後藤新平の植民政策(3)文装的武備

後藤新平の植民政策について無体系に読み散らかしている。 藤原書店が鶴見祐輔著の『正伝 後藤新平』8巻を発行。4巻が満鉄時代を扱っており、(2005年、藤原書店)後藤の植民政策を知る文章がいくつかありそうなので手に取った。特にここには「大アジア主…

安全保障と情報通信ーカナダ、サイパンの動き

カナダ政府が、米国国防省も台湾軍も使用する、衛星会社を中国に売り渡すことを許可したと言うニュース。勿論米国が激しく批難。 U.S. rebukes Canada over Chinese takeover of Norsat https://www.theglobeandmail.com/news/politics/us-rebukes-canada-ov…

梨木神社便り

通学路の途中に萩で有名な梨木神社がある。 京都御苑の一角にある神社の脇道は楠が天高く茂って、歩くのに最適だ。 萩が好きな新渡戸も来たのであろう、と想像するとまた特別な場所に思えて来る。 4月訪ねた時はまだ、20センチくらいの枝だけだった萩が、…

後藤新平の植民政策(2)「日本植民政策一斑」

大正3年5月20日、6月5日、6月20日の3回、幸倶楽部で行われた後藤新平の講演の記録「日本植民政策一斑」が国立国会図書館デジタルコレクションで読める。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/980879?tocOpened=1 先にも書いたが昔の漢字、文章がわから…

後藤新平の植民政策(1)

もう2年前になるが日本財団の鳥井参与から、後藤新平の本が御厨教授が中心となって藤原書房から出ている事を教えていただいた。 新渡戸稲造を台湾に誘ったのが後藤である。 名前は知っていたが、矢内原、新渡戸を知るだけでも自分の残りの人生では足りない…

島嶼議連「第8回太平洋島サミットに向けて」

下記のFBは、海洋議連・島嶼議連の会長をされている古屋圭一議員のFBからである。 昨日島嶼議連の会合が開催され、来年の第8回太平洋島サミットに向けて提言がまとまった様子である。そこにはなんと「海洋安全保障」が盛り込まれた。 1997年の第一回島サミッ…

島サミットに米国が必要な理由

先日ご紹介したウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたバヌアツのBen Bohaneの記事。 多くのアクセスがあり、米中への関心の高さを感じた。 島嶼議連の勉強会で参加されたアジア大洋州局四方参事官のことを思い出した。 日本政府が主催する太平洋島サ…

パルド大使と人類共同の財産(3)

引き続き、当方の指導教官坂元茂樹教授の「深海底制度の成立と変遷 ー パルド提案の行方 ー」 p. 263-286、『海洋法の主要事例とその影響』(現代海洋法の潮流 第2巻)栗林、杉原編集。2007年、有信堂高文社。から。 非常に複雑な話で10回位読んでいるが…