やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「ベルツの日記」ハウスホーファーとベルツ

ハウスホーファーが太平洋地政学で、日本人マレイ説を応用している背景には、ベルツの存在がある。 「ベルツの日記」という本がある。 ベルツの日本滞在を綴ったもので、ナチス時代ドイツで出版された。日本で翻訳出版されたのは1939年。 明治9年から明治3…

「ハウスホーファーとラティモアに就いて」

同志社大学の図書館は私にとって宝島のような場所である。 しかも院生しか入れないドアの向こうは宝がザークザク。 ここで見つけたのが日本地政学協会が発行していた雑誌だ。ハウスホーファーの文献がいくつか掲載されている。 その中に5頁の短い論文だが興…

10の意味を持つアイランダーのイエス

よくこの太平洋島嶼国を相手に、基金を立ち上げる事ができましたね、と聞かれたのでアイランダーのイエスの意味を話した。 1989年に設立された笹川太平洋島嶼国基金は最初に担当された方が、カオス状態のまま去ってしまった。そこに私が入ったのである。財団…

Boczek博士の論文(読書メモ)

偶然ウェブ上で見つけたBoczek博士の論文 Boleslaw Adam Boczek, Ideology and the Law of the Sea: The Challenge of the New International Economic Order, 7 B.C. Int'l & Comp. L. Rev. 1 (1984), http://lawdigitalcommons.bc.edu/iclr/vol7/iss1/2 下…

UNCLOSと新国際経済秩序イデオロギー(読書メモ)

山本草二先生の海洋法の議論に出会えた事を心から感謝している。山本先生の海洋論は必須、と同志社の坂元教授から教えていただかなければ、山のようにある海洋関係の資料を当ても無く歩き回るだけであったであろう。 山本先生の海洋法の文献には「開発イデオ…

お金持ちやセレブは環境問題のプロか?

世界のセレブとビリオネラー。詐欺集団にしか見えません! 海洋問題を積極的に発信しているので、多くの質問をいただく。 下記はなんでロックフェラーが日本の漁業に口を出すのか?と質問をいただいて知った記事である。 東京五輪に向けて問われる「食料調達…

中国はどのように海洋法を理解しているのか?

中国が海洋法を独自に理解している、とよく聞く。 一体どのように理解しているのか?伊藤俊幸さんと防衛駐在官の記事があったので拾っておいた。 国際法無視の中国「海洋国土」論(上)米無人探査機「強奪」の意味--伊藤俊幸 2017年01月27日 https://www.huf…

ASIA PACIFIC BULLETIN太平洋シリーズ

2018年3月26日の日付で出たASIA PACIFIC BULLETIN太平洋シリーズ。 https://www.eastwestcenter.org/publications/browse-all-series/asia-pacific-bulletin 私の原稿に並んで、フィジー問題、フランス、マリアナ諸島、等々合計で6本の原稿が同時に公開さ…

Japan's Oceania Engagement and Maritime Security by R. Hayakawa

昨年島嶼議連、海洋議連が海洋安全保障の件を取り上げた事を書かせていただいた文章が、ワシントンの東西センターから出ました。 安倍政権のインド太平洋線戦略を応援するつもりで書かせていただきました。 前のブログで取り上げたニッスイのニュージーラン…

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(4)

ニュージーランドのシーロードが、ニュージーランド中から嫉妬されるほど成功しているのは知っていた。断片的に情報は得ていたが、今回まとめてみて改めて学ぶ事が多かった。 オーストラリアとニュージーランドへの中国の大型投資が批判される中、日本企業も…

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(3)

いったい、ニッスイはニュージーランドのマオリとどのような水産経営をしているのか? 下記の記事は2012年のもの。ニッスイがシーロードに参入して10年少しが経過した頃だ。 日本水産にニュージーランドのマオリが神像を寄贈/ニュージーランド国外初 2012年…

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(2)

まだこの問題を扱った報告書などはないようで、主にニッスイとシーロードが発信している情報をたよりにまとめて行きたい。 決してニッスイ関係者でもお金をもらっているわけでもありませんが、ブルーエコノミーというフェイク政策を進めようとしている世銀な…

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(1)

ニュージーランドは太平洋島嶼国に比べると大きな国だが、世界的に見ると小国、に位置する。 もう一つ重要なのは、海洋法の議論の中で、ニュージーランドは常に太平洋島嶼国と協力してその海洋の権益を確保してきた事だ。海洋法121条の島の制度にも大きく関…

NYTimesが親トランプ?(メガ海洋保護区否定論)

今日がたまたま誕生日の共和党の友人の転送したニュースだ。 Bigger Is Not Better for Ocean Conservation By LUIZ A. ROCHAMARCH 20, 2018 https://www.nytimes.com/2018/03/20/opinion/environment-ocean-conservation.html ニューヨークタイムズが出した…

米議会・太平洋司令軍、対中国懸念で完璧一致

2月に行われた公聴会がハリス司令官の最後かと思っていたが3月15日にSenate Armed Services Committee の公聴会が行われ、映像がウェッブに上がっていた。 (リンクが切れていたので探したがこれかどうかいまいち自信なし) 昨晩ざーっと聞いたが、中国、…

Palauleaks ビリオネラーは大統領のお友達

笹川平和財団の羽生元会長からパラオの大統領選をフォローするように指示があった時は、「ああ、結局島の事を何もわかっていない。」とがっくりした。 選挙監視ならいいんですが、島の選挙戦のフォローは本来ならば距離を置くべき作業だ。 しかし、考えよう…

山本草二先生の国家管轄論

矢内原や新渡戸の植民論は、できれば触れたいが、そんなに今書いている博論の重要部分ではないので、どんどん読めてどんどんこのブログにメモできる。 しかし、博論関係となると筆が進まない。パソコン叩くのが進まない。思いっきり躊躇してしまう。 博論で…

矢内原の帝国主義研究

自決権の向こうにあるのが植民主義であり、帝国主義であり。。 矢内原は帝国主義についても色々書いている。リストアップだけして後で読みたい。 目次に「帝国主義」と書かれたものを拾った。 第1巻 植民及び植民政策(索引には10頁に渡って) 植民政策の…

読書メモ『南洋群島の研究』矢内原忠雄ー情報戦争に参加しない学問

矢内原忠雄全集第3巻に『南洋群島の研究』が入っている。 この中の第7章第4節が委任統治、である。(全集1963年、398-406頁) 1940年に出版された矢内原忠雄の『南洋群島の研究』英文 連盟規約第22条、委任統治の説明と、満州事変勃発に続く日本国内の「…

読書メモ『植民政策より見たる委任統治制度』矢内原忠雄 その2

以前メモした矢内原忠雄先生の『植民政策より見たる委任統治制度』。 矢内原全集第4巻(170ー195頁、岩波書店、1963年)出版されたのは昭和12年7月「国家学会50周年記念国家学会論集」 以前書いた読書メモ 国際法の観点から気になる箇所があったので、忘れ…

祝 笹川陽平会長パラオ名誉市民に!(この件は人生最大の失敗だが記録として残しておく)

(この件は人生最大の失敗だが記録として残しておく) 笹川陽平日本財団会長が、パラオ政府から名誉市民権を授与される事がパラオの国会で決まった。 昨年、パラオの友人知人に呼ばれてパラオに行った際、相談された件の一つがこれだった。 感謝の気持ちをど…

読書メモ「国際連盟委任統治問題一件」

等松春夫博士の『日本帝国と委任統治』に引用されていた「国際連盟委任統治問題一件・独逸ノ植民地回復要求関係 第二巻」がウェッブで読めるのである。 「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B04122007000、国際連盟委任統治問題一件/独逸ノ植民地回復要求関…

ポール・アレンはシーシェパードのお友達

シーシェパードとパラオのレメンザウ大統領のお友達のアレン、です。 パラオの違法操業監視のために40億円を出した、マイクロソフト創業者のポール・アレン。 彼のツイッターやウェッブを見ていたら、見覚えある名前が頻繁に出ている。 シー・シェパード そ…

ポール・アレンのフェイクな試みとパラオの水産資源

SkyLightというフェイクな違法操業監視技術に40億円出したマイクロソフト創業者 マイクロソフトの共同創業者ポール・アレンが40億円位を投資して、空から違法操業取締をする技術開発をする、とのこと。 そしてこれを昨年のマルタの国際会議で発表したのだ…

読書メモ「新渡戸稲造の植民思想」平瀬徹也

続いて新渡戸の植民論を扱った下記のペーパーのメモ。 これも以前読んで再読したいと思っていた論文だ。 平瀬徹也 「新渡戸稲造の植民思想」『東京女子大学附属比較文化研究所紀要』 (通号 47) 1986 年 筆者の平瀬徹也氏は東京女子大学を2002年頃退官された…

読書メモ『植民学の成立』田中慎一1982

このペーパーは、日本の植民学がどうなっているのか専門家のアドバイスを聞いてから再読したい、と思っていたものだ。同志社大学で幸い植民政策で博士を持っている若手研究者にお会いできたので期待していたのだが、日本の植民学、植民政策、植民は海外から…

読書メモ『日本帝国と委任統治』等松春夫著ーイヤハートと日米関係

等松春夫著『日本帝国と委任統治』でイヤハートの件が書いてないか索引を見たら、ビンゴ! 150-151頁に短い記述だが、イヤハート失踪事件が書いてある。 この事件で、イヤハートの失踪を巡って、日米間の疑念は最高潮に達したのだ。 しかも失踪5日後は盧溝…

読書メモ『日本帝国と委任統治』等松春夫著

この読書メモは自分のために書いているんだが、結構アクセスがあって少しは世の中に役に立っているのかもしれない。 書くと忘れないし、後で確認する時に検索できて楽なんだ。 さて、ハウスホーファーの「太平洋地政学」に戻ると宣言しておきながら、立作太…

ミクロネシア3国が中国と協定を結ぶ日

オーストリア大学の修士の学生さんが書いた記事なのだが簡潔にまとまっている。 米国とミクロネシア3国の自由連合協定の話。 CHALLENGES ARISE FROM COMPACT OF FREE ASSOCIATION WITH THE US IN STATES AND TERRITORIES by Debora Aberastury | Mar 13, 20…

読書メモ Japanese Southward Expansion in the South Seas and its Relations with Japanese Settlers in Papua and New Guinea, 1919-1940

ハウスホーファーの太平洋地政学を読み始めたのだが、横道に逸れたまま元に戻れない。 この岩本さんの論文の一部をメモして、戻りたい。 岩本洋光さんはオーストラリア国立大学で小磯嶺吉を扱った博論を書かれた方ではないか、と思う。 この文献も読もうと思…